クリエイターたちのイラスト作画風景。二次創作の“ルール崩壊”は同人活動崩壊に至る場合も

 最近、Twitterやイラスト投稿SNSのpixivなどで盛り上がっているキーワードが“クッパ姫”だ。これは、任天堂のゲームソフト『スーパーマリオ』シリーズに登場するキャラクター・クッパを女体化させた二次創作キャラクター。もちろん公式設定にはないキャラだが、「カメ型の敵キャラをあえて人間の女性に擬人化する」という意外性がウケ、思い思いのクッパ姫のイラストが投稿されて話題となった。一方、加熱する“クッパ姫”ブームに対して、他のクリエイターからは注意を呼びかける声も挙がっている。“クッパ姫”ブームをはじめ、二次創作はどこまで許されるのか? 肥大化するオタクカルチャーがもたらす功罪とは?

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■スーパーマリオシリーズのキャラクターを二次創作 ネットで騒ぎに

 クッパ姫は、新作ゲーム『New スーパーマリオブラザーズ U デラックス』に登場するアイテム「スーパークラウン」によって、クッパがピーチ姫の姿に変身したという設定の二次創作キャラクターであり、多くの擬人化キャラと同様、萌え系のタッチで胸が大きく、「角や牙を生やしたちょっと悪役っぽいお姫様」ふうに描かれているものが多い。

 そもそもは9月19日、マレーシアのTwitterユーザーであるhaniwa(@ayyk92)氏がイラストを投稿したことがきっかけとされ、多くの類似イラストが登場し、「キングテレサ姫」や「ヨッシー姫」などの派生キャラクターも誕生。『ワンパンマン』作画の村田雄介氏や『ポプテピピック』大川ぶくぶ氏などの人気漫画家も参入し、日本はおろか海外でもクッパ姫に関する投稿や関連ワードが一週間ほどTwitterの人気ワードになった。

■そもそも同人活動とは? 一部のファンがこっそりと楽しんでいた“非公式作品”

 ただ、こうした二次創作の歴史は古く、そのルーツは同人誌や同人活動にあるといえる。同人活動とは、同好の仲間同士が小説や漫画、ゲーム、音楽などの制作・発行を自費で行なうことで、基本的に仲間うちで楽しむことが目的だ。活動の中心として知られるのが、出版社を通さずに同人(仲間)で販売する同人誌である。同人誌は一般流通せず(一部アニメショップなどでは販売)、コミックマーケットなどの即売会で販売される。今では、絵(イラスト)に興味がある人が気軽に交流したり、自分で描いた作品を簡単に公開できるWebサービスのpixivやTwitterなどの台頭により、同人活動はより身近になってきている。

 同人活動には、「あくまでも一部のファンがこっそりと楽しむもので本家には迷惑をかけない」といった最低限のマナーのようなものがあり、特に二次創作物に関しては、元ネタのファンや他人に不快感をもたらす可能性があることを自覚する必要がある。しかし、昨今のSNSの普及によって二次創作を公開することのハードルが低くなり、ルールを守らない一部ファンたちの自己中心的な問題行動が目立ちはじめ、同人活動の根幹をなす「オリジナル作品をリスペクトする」という基本概念も揺らぎ出したのだ。

■公式キャラ化への署名活動が勃発、一方で創作主がルール遵守の注意喚起

 こうした状況に対して、漫画家や同人系グッズ制作会社など“内部”からも注意を呼びかける声が挙がっている。アクリル製オリジナルグッズの製作会社「アクリルグッズの達人」の公式Twitter(@acryl_tatsujin)では、「公式さんと見間違うようなイラストはお断りさせていただく場合がございます」、「二次創作への認識が甘い方が多く見受けられるので、会社自体を守る意味を込めましてもお断りをさせていただくことがございます」と謳っている。きっかけとなった先述のhaniwa氏も、「ピーチ姫を悪役風に描きクッパの要素を足したものでファンアートのテーマとして長年存在していたもので、私自身はここから収益を上げるようなことはしていません。求められていないところでクッパ姫の話題を振らないでほしい」など、同人ルールを守っていることを表明している。

 『FAIRY TAIL』で知られる漫画家の真島ヒロ氏も「若い作家さんに少し覚えていてほしいのは、自分の立場、版権元、自分と契約中の会社、他者との関係などを考慮して、最悪自分以外の誰にも迷惑がかからないという担保を得てから好きな活動をしてほしい」とツイートしている。

■二次創作のルール崩壊は、同人活動崩壊に至る場合も

 先ごろ、火の鳥やアトム、ブラック・ジャックなどの手塚治虫キャラクターを美少女化した「伽羅少女」が戦うゲームアプリ『絵師神の絆』が発表された。手塚プロダクション監修のもとに、フォワードワークスとコンパイルハートが制作する。ブラック・ジャックのアイデンティティとも言える移植された肌の設定が活かされていない等、一部のファンから「原作の設定を軽んじている」と批判を浴び炎上騒ぎになった。

 このゲームに対し、故・手塚治虫さんの娘でありコンテンツ展開の監修を手がける手塚プロの取締役・手塚るみ子氏は「手塚作品の全ての企画を私が監修してるわけではありません。また取締役とはいえ社長ではありません。各事業にはそれぞれ営業がいてビジネスとしての判断をもって契約しています。理解を越えるものがあっても多様性は必要だと思うようにしています」と慎重なコメントを発表。

 過去には恋愛シミュレーションゲーム『ときめきメモリアル』(コナミ)のように、黙認と思われていた状態から突然、法的手段の行使に至る場合や、『しまじろう』(ベネッセ)のようにいったん許諾したものの急に取り消し、結果としてファンダムによる同人活動が事実上崩壊に追い込まれたケースもある。こうした“最悪の事態”を恐れ、低くなりすぎた二次創作へのハードルやマナー意識に対して、創作者側も危機意識をつのらせているのだろう。

 本来はキャラクターを応援するはずだったファンの行動が、安易で自己中心的な意識から逆にオリジナル作品を傷つける可能性は多々ある。同人活動全般が禁止されたり、法的な制裁に発展すれば、これまでの日本のオタクカルチャーを支えてきた二次創作活動が衰退・絶滅することだってあり得るのだ。今後は、同人活動や二次創作に関わる人たちのリテラシー能力(作品を適切に理解して表現すること)の向上があらためて求められるだろう。

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