探査機「はやぶさ2」が映し出した小惑星は石ころみたいで、人類が古くから星に託したさまざまな思いを涼しい顔で裏切っていた。

 そのさまざまな思いを文学に探ったエッセー集である。古事記や枕草子などの古典、三島由紀夫やレイ・ブラッドベリの小説、宮沢賢治やサン=テグジュペリの童話、詩、短歌、俳句、歌謡曲、辞典……つまりあらゆるジャンルのテキストを渉猟し、縦横に引用しながら星に寄せて思いを巡らせている。

 古来、人は星をいろいろなものになぞらえた。神、死者、希望、犯人。フィクションの中では星になったり、星を呑んだり、星を殺したりした。

 しかし、日本で星の神話や民話は少ない。和歌でも月を詠んだもののほうがはるかに多い。満ち欠けがあるかないか、単数か複数か、大きいか小さいかの違いによるものだろうか。

「『日本書紀』は、星の神は邪神であり、悪神であった、とはっきり記している」

「清少納言は夜空を頭に描いて『星は』と書きはじめたのではなかったらしい。彦星と織女の区別もつかなかったのではないか」

「主人公の少年ジョバンニが牛乳をもらいに行くのは、『巨きな乳の流れ』である天の川に近づくための行為だろう」

 これは言ってみれば、「文学版プラネタリウム」である。案内人である著者のナレーションは、詩人で元編集者だっただけに情報と情緒のブレンド具合が絶妙で、語り口が耳に心地いい。

 少し急ぎ足で読んでしまった。今度はゆっくりと読もう。

(白水社 2300円+税)=片岡義博

関連記事