実力派のプロミュージシャンが腕前を発揮した「屋根裏音楽祭」=10月13日夜、福井県鯖江市日の出町

 閉じたシャッターを背に、店内には3人のプロミュージシャン。シンセサイザーが奏でるクラブ系サウンドに、生音のドラムとベースが合流すると、観客の体の揺れが次第に大きくなっていく―。

 10月13日夜、JR鯖江駅前のカフェバー「中野商店」が企画するライブ「屋根裏音楽祭」の11回目公演が開かれた。客席からアンコールが沸き起こるのを確認すると、オーナーの中野伸さん(35)=鯖江市=はうれしそうに語った。「鯖江で本物の音楽を聴ける、そんな場所を作りたくって店を始めた」

 破れたジーンズに、キャップから伸びる長髪。海外で美容師として活躍していた高知県出身の中野さんが知人の縁で鯖江に移住し、店を開いたのは2年前。音楽業界で働いた経験はないが、熱意で実力派ミュージシャンを次々と誘致した。「自分が楽しいことを全力でやれば、似てる人間が集まってきて世界はできる」

 だからこそ、腹が立つこともある。「シャッター街の駅前では盛り上がらないとか言いながら、自分では何もやらない大人が多すぎる。だったら自分たちでやったほうが面白くなるっしょ」

 そんな中野さんとRENEWを同じ鯖江駅前で久保田酒店を営む久保田裕之社長(45)が結びつけた。久保田さんは以前から、鯖江駅に降り立った観光客に店舗を待合所として開放するなど、まちづくりに積極的に関わってきた。

 久保田さんは丹南の本物のものづくりの魅力を伝え、それを地元の誇りにつなげようというRENEWに共感。自身、今回「駅前酒場カモシバ」と銘打った関連イベントを店舗で開く。

 「その土地ならではの酒や食、人との交流も“本物”。その魅力を実感してほしい」と、越前漆器や越前焼で利き酒とおつまみを楽しめるようにする。さらに鯖江駅前からRENEWが始まっているようにしようと、中野さんに声を掛けた。

 20日夜は、中野商店が入るビル3階でライブペインティングを催す。女性の「心世界」を絵で表現するアーティストとして大阪を拠点に国内外で活動するsilsil(シルシル)さんが、越前和紙のキャンバスに描く。コラボ演奏する女性ピアニストは、海外ツアーを成功させている人気バンドの一員だ(ライブ詳細は「屋根裏音楽祭」で検索)。

 RENEWも屋根裏音楽祭も駅前酒場カモシバも、行政主導ではないことが共通点。ものづくり、音楽、食で異なるが、本物が持つ力でまちを持続させていこうという志は重なっている。今年のRENEWを輝かせるのは職人だけではない。

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 持続可能な産地を目指し、2015年に福井県鯖江市河和田地区で始まった産業観光イベント「RENEW」。今年はエリアを福井県の丹南全体に広げ、10月19~21日に開かれるRENEWの「これまで」と「これから」を探る。

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