ハコアのワークショップで木に触れる参加者たち=2017年、福井県鯖江市西袋町(山口工芸提供)

 木の温かみとモダンなデザインが一体となった社屋は、自然豊かな福井県鯖江市河和田地区でひときわ目立つ。木製雑貨製造販売の山口工芸(西袋町)が展開する自社ブランド「Hacoa(ハコア)」のダイレクトストア福井店。月に1度、工房と隣り合う社屋の一角で木工のワークショップ(WS)を開いている。

 バターナイフに鉛筆、升や箸。どれも自分の手で制作できる。木材を紙やすりで磨く音、ほんのり漂う木の香り、職人と参加者の楽しげな会話が広がる。

 福井店は2008年の新社屋建築に合わせオープンした。「せっかく工場が近くにあるんだから、何かできないか」。スタッフの雑談をきっかけに15年から始めた木製バターナイフのWSが人気を集めた。「自分で作ったものを使うのが楽しみで、朝ご飯を食べるようになった」。参加者からうれしい感想が届いたこともある。

 「実際に現地で見ることで、製品の魅力を直接知ってもらえる」とWSを企画するハコア事業部長の前田元紀さん(29)。中心市街地から離れた工場で職人と触れ合う機会になるWSは、ブランドのファンと深くつながるきっかけをもたらしてくれる。

 作り手にとっては、普段は顔を見られないユーザーの声が刺激になる。職人の佐々木健さん(32)は「今まで製品を通した一方通行だったのが、WSでは意見が戻ってくる。仕事への意欲が高まる」と笑顔を浮かべる。

 BtoB(企業間取引)型が主流のものづくり産地にとって、WSは消費者サービスであると同時に“成長”の好機。毎年のRENEWでも事業者は多彩な企画を用意する。今年はハコアを含め過去最多となる40のWSが開かれる。

 「会社を伸ばすのは人材。情熱を持って働く人、ポテンシャルのある人と出会いたい」

 昨年からRENEWに参加する眼鏡素材販売のキッソオ(同市丸山町4丁目)の吉川精一社長(43)は、WSをリクルートの一環としても捉えている。同社は眼鏡素材を使ったアクセサリーのメーカーとしても成長中だが、新たに切り開いていく分野に強い人材を確保するのは、地方の中小企業にとっては至難の業だという。

 RENEWに集うものづくりに関心がある若者に、WSを通じて自社の商品や扱う素材に触れてもらい、仕事のやりがいを直接伝えられる機会は貴重。会社入り口の壁面は、イベントのトレードマークの赤い丸ですでに飾った。「ものづくりは楽しい世界。もっと若者があこがれる業界にしていかないとね」。吉川社長は今年もWSの現場に自ら立つ。

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 持続可能な産地を目指し、2015年に福井県鯖江市河和田地区で始まった産業観光イベント「RENEW」。今年はエリアを福井県の丹南全体に広げ、10月19~21日に開かれるRENEWの「これまで」と「これから」を探る。

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