飾り金具を作る小柳さん。ガラス越しに間近で見学できる=10月9日、福井県越前市武生柳町の小柳箪笥

 22社、37社、85社、110社―。2015年に始まった工場開きのイベント「RENEW」に参加する企業、工房の数は毎年増え続け、今年はついに大台を突破した。

 エリアも福井県鯖江市河和田地区から越前市、越前町まで拡大。業種は昨年までの漆器、めがね、和紙、打刃物、箪笥(たんす)に、焼き物と繊維が加わり、計7産地となり、まさに“ものづくりの丹南”を象徴するイベントに急成長している。

 「1社だけ、産地一つだけを訪れるのと、丹南をまるごと体感してもらうのでは満足度がまったく違う」

 産地がつながるメリットをそう強調するのは、RENEW実行委メンバーを務める龍泉刃物(越前市)の増谷美穂さん(31)。平らな金属板を鋭い刃物に変えていく職人技に、昨年の参加者は目を丸くした。そうした感動を呼べる伝統の技術が、半径10キロ以内に集積している強みを今、改めて実感している。

 工場開きイベントの先駆けとして知られる新潟県の「燕三条 工場の祭典」。16年秋に視察した越前市の和紙職人、瀧英晃さん(39)=滝製紙所=は、小さな爪切りを作り続けているベテラン職人のこだわりを聞き、迷わず買った。同行した若手の職人仲間も全員同じだった。「背景を知ると使いたくなる。工房や職人が“売り物”になる」と衝撃を受けた。

 創業111年を誇る小柳箪笥(同市)の4代目で伝統工芸士の小栁範和さん(44)は、昨年4月に店舗を改装した。家具や雑貨が並ぶおしゃれな販売スペース奥の工房はガラス張りに。木工を体験できる場所も設けて、昨年からRENEWに参加している。

 越前箪笥は単なる収納家具ではなく、家宝になるべき商品。繊細な飾り金具まで手作りする様子を「見える化」し、体験を通じて技術の一端に触れてもらう。「作り手の顔を知ってもらうことが、購入する流れにつながっていく」と日々実感を重ねている。

 増谷さん、小栁さんはRENEWの両産地リーダー、瀧さんは副実行委員長として、エリア拡大の推進力となった。長年の課題とされてきた産地間の連携が、新感覚を身につけた団塊ジュニアによって進みつつある。

 瀧さんは言葉に力を込める。「僕たち和紙職人も、ほかの産地を見学して知識を増やし、お客さんに漆器や刃物、箪笥のことも説明する。そうすれば人の流れが生まれ、きっと丹南全体が盛り上がる」

  ×  ×  ×

 持続可能な産地を目指し、2015年に福井県鯖江市河和田地区で始まった産業観光イベント「RENEW」。今年はエリアを福井県の丹南全体に広げ、10月19~21日に開かれるRENEWの「これまで」と「これから」を探る。

関連記事