鯖江に移住し、漆琳堂で店長を務める楳原さん=福井県鯖江市西袋町

 「あっ、これ大阪で売っていた器だ」

 2015年10月、福井県鯖江市河和田地区で初めて開かれたRENEW。大阪府出身の楳原和香さん(28)は、たまたま立ち寄った漆器店に並ぶ赤や緑、ピンクの汁わんとの“再会”に驚いた。

 「結婚したら使いたいな、と憧れていた器。漆器は高級で特別なイメージだったけど、日常使える身近なものに感じた」。都市圏で出合った器の産地が、河和田だったことを初めて知った。

 今、これらの漆器を製造販売している漆琳堂の直営店(鯖江市西袋町)店長を務めている。大学卒業後に靴下のデザイナーとして働いた経験を生かし、ロゴデザインや漆器アクセサリーの開発にも携わる店の大黒柱だ。

 河和田地区には元々、親しみを感じていた。大学時代の河和田アートキャンプで出会った交際相手の楳原秀典さん(32)=大阪府出身=の移住先。和香さんが奈良県に就職した後も互いに行き来するうち、結婚後の河和田移住をぼんやり考えるようになった。

 まずは秀典さんのいる河和田に慣れようと、16年5月に鯖江市に引っ越し。仕事はまだ何も決めていなかったが、知人の紹介で漆琳堂の内田徹専務から直営店で働いてみないかと誘われ、心を決めた。

 「興味のきっかけになった憧れの器を作っている場所で働けることがうれしかった」。RENEWで漆器を見つけてから約半年。就職は河和田に腰を据える後押しとなり、2人は17年に結婚した。

 鯖江市独自の調査によると、11年から今年4月までに県外から河和田地区への移住者は25人。市担当者はRENEWについて「参加者が若い職人たちを見ることで、今後に続く人も出てくるのでは」と期待を寄せる。

 和香さんの働きぶりについて内田専務は「大阪出身の楳原さんには、外部の若い視点がある。違った視点から自分の意見をしっかりと話してくれる」と目を細める。

 「都市圏でただ製品を見るだけでは、魅力全てが伝わらない」と和香さん。産地へ来て工房を直接見て、職人と触れあえるRENEWは、自分のように伝統工芸を身近に感じるきっかけとなると信じている。

 「若い人にも手にとってもらえるような漆器を作り、広めていきたい」。目線は「使い手」から「作り手」にすっかり変わっている。

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 持続可能な産地を目指し、2015年に福井県鯖江市河和田地区で始まった産業観光イベント「RENEW」。今年はエリアを福井県の丹南全体に広げ、10月19~21日に開かれるRENEWの「これまで」と「これから」を探る。

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