普段は一人で黙々と漆を塗る錦古里さんの工房に、RENEWでは多くの見学客が訪れる=10月4日、福井県鯖江市河和田町

 持続可能な産地を目指し、2015年に福井県鯖江市河和田地区で始まった産業観光イベント「RENEW」。今年はエリアを同県丹南全体に広げ、10月19~21日に開かれるRENEWの「これまで」と「これから」を探る。

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 普段は一人で漆器と向き合う工房に、ひっきりなしに見学客がやってくる。3年目を迎えた昨年秋のRENEW。「一般の人が工場に来るなんてなかったのに」。初めて工房を開放した越前漆器の塗師、錦古里正孝(きんこり・まさたか)さん(65)=鯖江市=は笑顔で振り返る。

 うち10人ほどは、錦古里さんの手ほどきで漆塗りを体験した。「どんな素人さんの手つきを見ていても、こういう塗り方もあるのかと得るものがあってね。もっと自分はうまくなれる、そう感じたよ」。職人として今までにない刺激を感じた。

 1カ月半ほど後、体験に参加した福井市内の夫婦が、漆が乾いた器を取りに来た。「これで正月にお雑煮を食べよう」。仕上がった漆器を大切そうに手に取る夫婦の様子に「実際に現場を見てもらえれば、職人の技術が分かってもらえる。それが千人に一人でも大事なこと」と感じた。

 今年のRENEWが終わったら、工房を改装する。来年春からは常に仕事場が見学でき、製品も販売する。予約制で体験にも応じる。昨年の刺激は「通年でもやれる」という自信になった。

 「RENEWがなかったら、残り10年ほどで仕事は“軟着陸”させるつもりだったけど、今はまだ発展したい」。跡継ぎはいないが、考え方は百八十度変わった。

 「感謝の気持ちを込めて地元の地酒を送ります。また必ず訪問します」。眼鏡のセル枠とメタル枠を融合した「コンビ枠」の高い技術を持つハヤカワメガネ(鯖江市寺中町)の早川善徳さん(60)は、2年前のRENEW後に届いた礼状を今も大切にしている。

 工場開放の2日間、職人らの技術をずっと見つめていた埼玉県の男子大学4年生は約束通り、今年10月に再び来社。欧州の産地にも足を運んだ成果を卒論にまとめ、卒業後は眼鏡業界に就職する決意を伝えた。

 昨年のRENEWでは2日間で100人以上が訪れた。「特段うちがもうかるわけでもない。忙しいだけ」と憎まれ口をたたきつつも「見せられるものは全部見せるし、自分はこれからもメードインジャパン品質の製品を作る。それが来てくれた人に対する答え」。厳しくも温かい職人気質も人気の要因だろう。

 早川さんにも今のところ跡継ぎはいない。「やりたいやつがいるなら、機械も道具も全部やってもいい」。職人が継ぎたいのは、看板よりも人生を投じた技術。投げやりにも聞こえる一言は、若い人材と産地をつなぐRENEWへの期待とも受け取れた。

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