箱根駅伝の予選会をトップで通過し、あいさつする駒大・大八木監督=国営昭和記念公園

 10月13日、土曜日、東京・立川。

 広い駅構内のコンコースには、箱根駅伝予選会に参加する大学の幟(のぼり)が立てられ、気分を盛り上げていた。

 その幟の中に、予選会では珍しい紫の学校のものが混じっていた。駒沢大学だ。

 予選会には9年ぶりの登場。還暦を迎えた大八木弘明監督は、お祝いにもらった赤いストップウオッチを、この日も首から下げていた。

 「ここは来ちゃいけないところなんだけどね。でも、ここを再スタート地点にしますよ」

 駒大はいま、踏ん張りどころにいる。出雲、全日本、箱根で積み上げた優勝回数は21。「平成最強軍団」とも呼ばれ、数年前まで青山学院大学、東洋大学、駒大で「3強」を形成していた。

 ところが、前回の箱根駅伝では12位に沈み、予選会に回った。

 その一つの理由が、リクルーティングの苦戦、有望な学生の勧誘で後手に回ってしまっていることだ。

 駒大が箱根で4連覇を達成した当時は、大八木監督の熱血指導に憧れ、自ら進んで駒大の門を叩く選手が多かった。

 しかし、ここ数年は青学大、中央大学、明治大学といった受験界では「MARCH」と呼ばれる人気校に選手が流れている。

 陸上部の要素だけでなく、学校のブランドイメージが選手の進路に影響を与えており、2018年4月に入学した選手たちも、さほど高校時代に実績をあげているわけではない。

 大八木監督は言う。「うちを選んだ選手と一緒に、原点回帰です。駒大の泥臭い練習を徹底して、もう一回戦えるチームを作らないと面白くない」

 流行のトレーニングを取り入れるわけでもなく、練習メニューも昔とほぼ変わらない。大八木監督は、かつての選手が持っていたような「たくましさ」を求めた。

 「9年前、予選会で走った時はタイムを稼げる選手がいたんですが、今年は違います。上じゃなく下を見て、層を厚くすることを考えました。最終的には地道な練習に耐えられるたくましい選手が残った感じかな」

 予選会では、今年取り組んできたことが実を結んだ。

 箱根駅伝の予選会では1チーム12人が走り、上位10人の合計タイムが採用され、総合タイムの速い順に11校が1月2日、3日の箱根駅伝に出場する。

 この日の駒大の走りには度肝を抜かれた。

 上位10人の総合タイムは10時間29分58秒。2位の順天堂大学にちょうど7分の差をつけていた。

 このタイムであれば、箱根駅伝の本番でも十分に上位を狙える。「下を見ての強化」が、ここまで選手の力を引きあげるとは、正直驚いた。

 大八木監督もほっと一安心。上出来のタイムに全日本、箱根に向けて楽しみが増えたという。

 「層が厚くなってる。全日本に向けて2人選手を残してあるし、箱根でも青学、東洋、東海が強いだろうけど、どこかを食いたいね」

 色とりどりの幟。監督の指導方針も、いろいろなものがあっていい。

 大八木監督の「オールドスタイル」のアプローチは、まだまだ元気だ。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市で生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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