表彰式後、妻のおなかをなでながら笑顔を見せる湯浅友晶選手=10月3日、福井県あわら市の福井県立芦原青年の家

 「番長」と呼ばれた男をカヌーが変えた。10月3日の福井しあわせ元気国体(福井国体)成年男子カナディアンシングル200メートルで3位入賞した福井の湯浅友晶選手(25)=福井県スポーツ協会=は、故郷から遠く離れた福井で競技人生を締めくくった。狙っていた優勝こそ逃したが持てる力は出し切った。「カヌーをしていなかったら、どんな人生を過ごしていたか分からない」と思うことがある。それだけに「カヌーには心から感謝したい」。澄み切った秋空に負けない晴れやかな表情を見せた。

 ⇒【選手名鑑】カヌー(スプリント)福井の選手

 福岡県筑後市出身。中学時代は、腕っ節の強さで名前が学校内外に知れ渡っていた。入りたかった柔道部には長い間入部を拒否され、在籍できたのはたったの半年間。相撲や駅伝の助っ人になるほどあり余るパワーをぶつけようと、柔道部があると思い、隣の久留米市の三潴高校を選んだが、既に廃部になっていた。

 失意の湯浅選手に声を掛けたのは、強豪で知られる同校カヌー部の山田裕二監督(当時=現教頭)。「湯浅はカヌー部を壊すか、日本一になるかどちらかだと思った。賭けだった」と振り返る。

 初日から有無を言わさず水上に出された。当然、転覆の繰り返し。何事も自分が一番という湯浅選手の闘争心に火が付いた。猛練習を重ね、3年時の全国高校総体で主将として男女総合優勝に導いた。

 日本体育大学でも年代別日本代表に選ばれるなど活躍。「番長」はいつしか「短距離のスペシャリスト」に成長した。福井県から誘われ2016年、県スポーツ協会の選手兼特別強化コーチになった。

 今年で競技を始めて10年、福井国体を最後に現役引退を決めた。「節目の年だし、お世話になった福井で締めくくろうと思った」。福岡県から駆け付けた両親も見守る中での決勝。惜しくも0・82秒差で頂点を逃したが、表情に悔いはなかった。

 レース後、福井で出会った妻(22)に駆け寄り、12月の出産を控えて目立ち始めたおなかをそっとなでた。「将来『お父さんは頑張っていたんだぞ』と子どもに話したい」。これから新たな人生がスタートする。「カヌーの指導者、競輪選手…、いくつも夢はある。だけど、まずは育児に集中です」。照れくさそうな表情を見せ、会場を後にした。

あわら市
あぁ、あわら贅沢
【編集部が勝手にオススメ】▽観光 あわら温泉、北潟湖▽味覚 越のルビー、松乃露…
カヌー
▼スプリント:流れのない川や湖を利用し、一定の距離と水路(幅9m×9レーン)を…
カヌー
関連記事