【論説】第4次安倍改造内閣の下で初の政府税制調査会が、税制改正論議に着手した。政権が掲げる「全世代型の社会保障」が主なテーマになる。与党の税制調査会も来秋の消費税増税への対応を中心に、改正作業に取りかかる。いずれも大きな課題だ。

 ところが政権は、少なくとも来年の参院選後まではさらなる負担増の議論を先送りする狙いとみられている。消費増税を控えることもあり、10日に開かれた政府税調の総会でも、政権の姿勢に配慮する空気が漂った。これで国の将来に責任を持てる話し合いができるのか疑問である。

 与党税調は、翌年度の見直し内容を大綱としてまとめるのが通例。これに対して政府税調は、有識者や自治体代表者らが参加し、中長期的な方向性を探るのが役目となっている。

 今回、政府税調が打ち出したのが、老後の資産形成支援だ。現在も、個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)や少額投資非課税制度(NISA)など、長期投資をする人の所得税優遇制度があるが、それぞれ内容が異なるため分かりにくい。これを整理し、簡素化を検討するという。

 資産形成の支援そのものは、国民の支持を得やすいだろう。ただ、この議論は社会保障改革の一環。改革の本丸である負担と給付の在り方が見えていない段階で先行するのは違和感がある。社会保障を持続可能なものとするには、いずれはさらなる負担増や歳出カットの議論が避けられない。そこを伏せたまま、議論の一歩目から、国民に自己責任による老後の備えを求めたことにならないか。

 資産形成支援を先に持ちだしたのは、参院選を意識しているのだろう。だが、その裏にある負担増を含めた改革の方向を早く示し、国民の判断材料とするのが本来の姿だ。社会保障改革の期間を3年間と区切ったのは首相自身。厳しい議論を後回しにする余裕はない。

 また、政府は65歳以上の雇用拡大や年金受給開始年齢引き上げの選択制など、高齢になっても働き続ける生涯現役化に注力する。老後の資産形成と並んで、社会保障に支えられる高齢者を減らそうという思惑がうかがえる。生涯現役化が人手不足に有効とみる意見はあるにしても、順調に見える雇用情勢の陰で就職氷河期の中堅世代は今も厳しい状況に置かれている。全世代型の安心のためには、人手不足対策は広い目配りの上で検討するべきである。

 一方、消費増税の準備も課題が山積する。景気の腰折れを防ぐ対策が重要なのは間違いないが、参院選を控え、対策にかこつけた大盤振る舞いの圧力が高まっている。軽減税率の財源の手当ても穴があいたままで、しわ寄せがどこに向かうかは見えていない。

 負担増は、誰もが避けられるものなら避けたい。それでも必要なのであれば、課題に正面から向き合い、国民に開かれた議論を丁寧に行うほかない。議論が政局に振り回されるような状況は改めてもらいたい。

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