【越山若水】兼好法師による随筆「徒然草」に引用された有名な和歌がある。「春はただ花のひとへに咲くばかりもののあはれは秋ぞまされる」(拾遺和歌集、詠み人知らず)▼花が一面に咲き乱れる春より、しみじみとした情緒は秋の方が優れている…。古代から日本人は季節の移ろいに敏感で、とりわけ秋のもの悲しさに心を寄せた▼燃え盛る暑さの夏を過ぎ酷寒の冬へと向かう秋は、生命感あふれる春とは違ううら寂しさが漂う。草花もまたススキやオミナエシなど控えめなたたずまいを見せる▼その代表といえばハギである。漢字で「萩」と書くように、秋の七草の一番手を飾る楚々(そそ)とした花。万葉集でも最も多い141首が詠まれ人気を博した。「山萩の盛りといふも淡々(あわあわ)し 下村ひろし」▼ところがどうだろう。県内を巡り歩くと、あちこちで派手に咲き誇る黄色い花がある。要注意外来生物・セイタカアワダチソウだ。「泡立草徒党を組みし雨催(あまもよ)ひ 松本翠」▼昔ながらの秋の花々とはまるで趣が異なる北米原産の植物。人の手が入らない田んぼや畑、あぜ道、空き地などに侵出し、わが物顔で振る舞っている▼農業の先行き不安から耕作放棄地は増加の一途。全国で42万ヘクタール、本県で1974ヘクタール(2015年)に達する。セイタカアワダチソウの繁殖は、日本古来のもののあはれでなく、政治のあはれを覚える光景である。

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