【論説】度重なる自然災害を受け、政府が重要インフラの緊急点検に乗り出している。電力、空港などについて計118項目を11月末までに調査し、防災・減災の対応策をまとめる。各種災害で過去にない対応が迫られる中、インフラの機能確保は重要だ。問題点を徹底的に洗い出してもらいたい。

 緊急点検は、今年の自然災害で経験したことのない事象が相次ぎ、重要インフラが機能不全に陥ったことが背景にある。政府が9月28日に発表した。

 特に▽7月の西日本豪雨時に「バックウオーター現象」で起きた洪水▽台風21号に伴う高潮による、関西空港の滑走路、ターミナルビルの浸水▽最大震度7を観測した北海道の地震で発生した、電力システム全体に影響が及ぶ大規模停電(ブラックアウト)―などが重視された。点検対象は電力や空港・港湾、河川のほか、道路、鉄道、病院、通信など多方面に及び、管轄は11府省庁に上る。

 駅の浸水対策、災害拠点病院の給水設備や自家発電など、これまで目配りできていなかったポイントを網羅的に見直すのは意味があるだろう。今年の福井豪雪を踏まえ、全国の高速道路など約3万4千キロについても車両滞留リスク区間を抽出し、除雪体制を調べる。

 バックウオーター現象の点検については、全国的な水平展開となる。この現象は、下流の状況に上流が影響を受けることを指す。7月の豪雨時、岡山県では高梁川が増水して激流となってしまい、合流地点から水が流れ込めなくなった支流側の堤防が決壊した。緊急点検は全国約2万1千の河川でこうした危険箇所がないかをチェックする。

 しかし、疑問もある。高梁川の増水はダムの放水がきっかけになった可能性も指摘された。堤防の機能とダムの容量・管理を一体的に検証しなければならないが、政府が示した点検概要にそうした意図はうかがえない。これでは再び「想定外」が生まれてしまわないか。

 また、台風21号の関空停電を受けた全国16空港の電源設備点検、台風8号で機能停止した沖ノ鳥島の観測設備の点検も項目に挙がっているが、それぞれ被害から1カ月、3カ月が経過している。なぜこれまで放置した部分に突然取り組むのだろうか。

 政府は緊急点検結果を受けた対策を、来年の通常国会に提出する2018年度第2次補正予算案などに反映、国土強靱(きょうじん)化基本計画の見直しにもつなげていくという。予算付けの理由をつくるためにお手盛りで調査していたり、事象の重要な要素を直視しないで都合の良い対策をまとめたりするようなことがあれば、かえってインフラの将来に禍根を残すことになる。

 点検の進捗(しんちょく)を監督すべき国土強靱化担当相は、実施を発表した直後に内閣改造で交代した。本来この点検は財政状況をにらみつつ、インフラの在り方をどう考えていくか、極めて重要な作業のはずだ。政府は肝に銘じて臨むべきだ。

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