【論説】説明を求められている問題の文書を「見ていない」とまで言い放つ姿には、あきれるほかない。

 学校法人「加計学園」の加計孝太郎理事長が愛媛県今治市にある獣医学部で記者会見した。今年6月に初めて会見した際には地元記者に限定し、会見時間も30分足らず。獣医学部建設への巨額の補助金支出を巡り県議会が説明責任を果たすよう求めたのは当然だ。

 だが、2回目の会見も質問に対して「覚えていない」「細かいことは知らない」を繰り返すなど、説明責任を果たしたとは到底言えない。愛媛県の中村時広知事は一定程度評価したものの「全部ふに落ちたかと言えばそうでもない」と不満も漏らした。加計氏には国会で詳細な証言をしてもらう必要がある。

 2015年2月の安倍晋三首相との面会で獣医学部の新設構想を説明し、首相から「いいね」とのコメントをもらったとする愛媛県文書に関しては、学園の事務局長が話を前に進めるために独断で虚偽の情報を伝えたと謝罪した。

 ただ、「学部を何とか形にしたくて、私が言ったのだと思う」とした事務局長の5月の説明には曖昧さが残り、他の県文書との矛盾点も指摘される。加計氏は、いつの時点でどんな内容の報告を受けたのかも語らなかった。否定の根拠、物証を示す気もなく、「記憶にない」「記録にない」の一点張りは論外だ。

 首相との面会が事実なら、新設計画を知ったのは「17年1月20日」とした首相答弁が真っ向否定されるという重要な文書だ。首相が「腹心の友」と称した加計氏が50年以上も認められなかった獣医学部新設を計画し、首相を議長とする国家戦略特区制度の下で優遇された構図を裏付けるものとも言える。

 学園側が当時の首相秘書官や内閣府幹部と面会を重ね、さまざまな厚遇を受けていた疑惑を持たれている。加計氏は「知らない。大きな流れは事務局から受けているが詳細は分からない」と説明。経緯を十分に調べて会見すべきはずなのに、国民を愚弄(ぐろう)しているとしか思えない。

 「総理のご意向」をかさに、内閣府から早期認可を迫られたとする文部科学省の内部文書。「行政がねじ曲げられた」と証言した元文科事務次官。関与を指摘された幹部らは「記憶にない」「記録はない」を繰り返すばかりだった。何一つ納得できる説明はなく、国民不信は払しょくされない。「納得できない」の声はやまないはずだ。

 首相は面会したとされる日に、報道機関がまとめた首相動静には記載がないと反論したが、動静にない密会も数限りないとの指摘がある。度々ゴルフや会食を重ねてきた加計氏から、事業者決定まで計画を全く聞かされていなかったとの説明自体も受け入れがたいものがある。

 政府や与党は加計氏の2度の会見で幕引きしたいところだろう。だが、かえって疑惑の火に油を注ぐ形になったとみるべきだ。

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