2年ぶり4度目の優勝を果たし、胴上げされる青学大の原晋監督=出雲ドーム

 シカゴ・マラソンで日本新記録を出し、日本実業団陸上連合から1億円の目録を受け取る大迫傑=シカゴ(共同)

 10月8日に行われた、学生三大駅伝の開幕戦「出雲駅伝」は、青学大が第1中継所から一度も先頭を譲ることなく2年ぶり4度目の優勝を果たした。

 夏合宿の取材では、20人以上が走った30キロ走では一人の脱落者も出さず、これだけ分厚い選手層を抱える大学は他にはないと思った。

 距離が伸びれば伸びるほど強く、選手の人数が増えれば増えるほど強いのは間違いない。青学大の「三冠」は出雲を制したことで現実味を増した。

 むしろ、12秒差の2位でゴールした東洋大の健闘には驚かされた。酒井俊幸監督は「優勝」という目標を絶対に下げない。

 「強い相手に対して引いたら、その後はどんどん落ちていくだけになりますから」

 高い基準を維持することで、青学大となんとか対抗している。昨年も全日本では5区まで先頭を走っていただけに、今年も見せ場を作るだろう。

 閉会式では出雲市の長岡秀人市長の挨拶が個人的には興味深かった。

 「昨夜、シカゴ・マラソンで2時間5分50秒の日本新記録をマークした大迫傑選手もこの出雲駅伝で4回走りましたが、一度も区間賞を取ったことがありませんでした。3位が3回、10位が1回…」

 大迫が早大で走っていた時を思い出し、思わずニヤリとしてしまった。

 大迫が1年生の時、早大は三冠を達成しているが、出雲の2区で思ったような走りができなかった大迫は、レース後も一人納得できない表情を浮かべていた。

 優勝したのに、怒っている。周りに迎合しない、面白い選手だなと感じた。

 3年生の時は1区を任されたものの、強風に苦戦し区間10位に沈んだ。

 その大迫が卒業してから4年が経ち、シカゴでモー・ファラー(英国)、ゲーレン・ラップ(米国)ら、オリンピックのメダリストたちを相手に一歩も引かないレースを展開した。

 この走りができれば、東京オリンピックでのメダルも決して夢ではない。

 出雲駅伝では解説を務めた日本陸連の瀬古利彦マラソン強化・戦略プロジェクトリーダーは「シカゴは気象条件には恵まれていなかった。途中、向かい風だったし、ペースメーカーが下手だった。条件さえ整えば、大迫は2時間4分台で走れるポテンシャルがあるんじゃないか」と、今後も記録を伸ばしていく可能性があることを示唆していた。

 21世紀に入ってから、駅伝からマラソンにつながる道筋が見えない時期が長く続いたが、大迫をはじめ、学生駅伝で注目を集めた選手たちが続々とフルマラソンで結果を残している。

 仕組みの問題ではなかった。選手、そして指導者の意識が変わったことで、日本のマラソン界は再び活況を呈し始めた。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市で生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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