【越山若水】「女の子が頬にあざをつくって登園した」「元気だけど傷は前にもあった」。仮に保育園から、こんな通報を役所が受けたとしたら対応の緊急度は「今すぐ」「48時間以内」のどちらか▼十数年前、自治体職員向けの児童虐待の研修会で目にした問いである。答えは「今すぐ」。理由はけがが頭に近いことと、暴力が繰り返されているかもしれないことだった▼ちなみに48時間は遅くとも対応するべき目安。さらに研修は続く。「保育園に着いてまず何をする」。園長と話す、保育士に様子を聞く、などの答えを講師は不合格にした▼正解は「自分の目で子どもを確認する」。絶対に間接確認で済ませてはいけないから。対応のタイミングと危険度判断のありようがよく分かる研修だった▼国の虐待対応手引きを読むと「かもしれない」の発想が念入りに記される。虐待が隠れているかも、きょうだいも被害者かも、単独の判断は間違うかも…▼でも、東京都目黒区で船戸結愛ちゃんが死亡した事件の報告書には、行政がすべて「大丈夫だろう」で動いたことが表れる▼結愛ちゃんが転居前に住んでいた香川県の担当者は「人員不足」と漏らした。やるべきことを分かっていてやろうとしない行政の怠慢ぶりには恐怖すら覚える。今年上期、子ども虐待疑いの通告は過去最多。理不尽で犠牲になる子をもう出してはいけない。

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