【論説】自民党総裁選で地方の批判を招き、沖縄県知事選では与党推薦候補が敗北するなど「1強」の陰りが指摘される中、安倍晋三首相は第4次改造内閣を発足させた。党役員人事を含め要職を盟友や側近で固め、初入閣組は総裁選で支持を受けた派閥の均衡に配慮した布陣だ。森友、加計学園問題などで政権への不信は払しょくされないまま。この陣容で国民の信頼回復が果たせるのか、疑問符がつく。

 2012年の第2次安倍内閣発足以来、首相を支えるのが麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官。とりわけ麻生氏には、決裁文書改ざんやセクハラ問題による事務次官辞任など自らがトップを務める財務省の不祥事が尾を引く。野党は無論、国民の間でもけじめを問う声がくすぶる。首相の信頼をかさに着たかのような放言も国民の怒りを増幅させかねない。

 菅氏は沖縄県知事選で三たび応援に駆けつけながら、推薦候補は8万票の大差をつけられた。「辺野古が唯一の解決策」と主張し続けてきた菅氏が前面に立ったことで批判を招いたとの指摘もある。政府との対話を求める新知事とどう折り合いをつけるのか。菅氏が強権に傾けば、国民の政権批判を加速させる可能性も否定できない。

 首相の悲願である憲法改正をけん引するのが党総務会長の加藤勝信前厚生労働相と、党憲法改正推進本部長の下村博文元文部科学相。加藤氏は総裁選で石破氏支持に回った竹下派ながら、首相を支持し、側近中の側近とも目されている。ただ、裁量労働制を巡る不適切データ問題などを棚上げしたままの昇格には違和感が否めない。首相の最側近である下村氏には加計学園絡みの献金疑惑が浮上した経緯がある。

 選挙対策委員長に起用された甘利明元経済再生担当相は、建設会社からの金銭授受問題を受け16年に辞任した。党執行部ならば、国会で野党から追及されないとの思惑が透ける。日報隠蔽(いんぺい)問題で防衛相を辞任した福井県選出の稲田朋美氏、うちわ配布問題で法相を辞めた松島みどり氏もそれぞれ筆頭副幹事長、広報本部長として復帰した。下村、甘利両氏と同様、首相に近い人物だから、党務ならば復権も可となれば、一連の混乱を目の当たりにしてきた国民にとってはこれまた違和感が拭えない。

 初入閣した12人は主に衆院6~8期と適齢期を過ぎた待機組であり「在庫一掃セール」の印象が拭えない。首相のいう「適材適所」は、今月下旬にも召集される臨時国会などで早々に試されることになる。法相の山下貴司氏は衆院3期での異例の起用だ。所属する石破派の分断を図る狙いも指摘されている。

 女性閣僚は片山さつき地方創生担当相のみで、「女性活躍社会」を掲げてきた安倍政権にしてはお寒い限りだ。人材の枯渇は「ポスト安倍」もしかり。1強体制の下で、党自体が活性化や人材育成をおろそかにしてきた「つけ」が回ったと言わざるを得ない。

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