【論説】これが沖縄の民意だ。米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古への新基地建設が最大の争点となった沖縄県知事選で、建設に反対する玉城デニー氏が初当選した。過去最多の得票39万6千票余に加え、建設を推進する与党などが支援した佐喜真淳(さきまあつし)氏につけた8万票の票差は重い。「沖縄に寄り添う」と言いつつ辺野古一辺倒にまい進してきた安倍政権は、再びノーを突きつけた民意にこれ以上背を向けてはならない。

 玉城氏は、急逝した翁長雄志(おながたけし)知事の「遺志を継ぐ」と表明。弔い合戦の様相を呈した選挙戦では、翁長氏の遺族の応援も得て流れをつかんだ。特に妻樹子さんの「政府が権力を行使して、沖縄県民を押しつぶそうとしている」との訴えは、翁長氏の国との激烈な戦いを想起させ、県民の心を揺り動かしたのではないか。玉城氏は米兵の父、母子家庭育ちといった生い立ちに触れ、全国最悪とされる県民所得や子どもの貧困率の解消などを訴えたことも奏功したようだ。

 一方の佐喜真氏は、普天間の早期返還は訴えたものの、辺野古には触れずじまい。直近の名護市長選では「争点隠し」に終始した与党候補が当選したが、沖縄全土には通用しなかったとみるべきだろう。さらに「辺野古が唯一の解決策」を主張し続けてきた菅義偉官房長官ら与党大物が続々と応援に駆けつけ、4年前は自主投票だった公明党も推薦に回るなど、組織的な選挙戦を展開したことが、むしろマイナスに働いたのではないか。

 「1強」による居丈高な進め方への批判は、安倍晋三首相が3選を決めた自民党総裁選で地方票の45%が対抗馬の石破茂元幹事長に流れたことでも明確になったばかり。沖縄県知事選の敗北は、改めて政権の地方基盤の揺らぎを示したといえる。来年の統一地方選、参院選に向け、どうすべきかを考える時が来ている。

 沖縄県は8月末に辺野古の埋め立て承認を撤回する「最後のカード」を切った。玉城氏は「あらゆる手段を使って阻止する」としたが、手段や権限はほとんどないのが実情だ。政権側がこれまでのように法廷闘争はクリアできると考え、何ら手を打たず、沖縄を追い詰めるようなことはあってはならない。首相は「選挙結果は真摯(しんし)に受け止める」と述べた。ならば辺野古の是非を再検討すべく、まずは新知事との対話をすぐにでも行うべきだ。

 日米地位協定の抜本改定にも取り組む必要がある。米軍の事故や事件のたびに沖縄県民は不平等を痛感し泣き寝入りさせられてもきた。政府の「運用の改善」という小手先の対応はごまかしであり、許されない。

 玉城氏が訴えた「アイデンティティー」は、在日米軍基地の7割の集中を強いられる沖縄が自己決定権を取り戻そうという翁長氏の理念である。どの地方自治体にとっても欠かせない理念であるからこそ、無関心ではいられないはずだ。沖縄を注視していかねばならない理由がそこにある。

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