【論説】高浜町の薬草産地化を目指す「青葉山麓研究所」が栽培しているゴシュユが、重陽の節句(9月9日)にちなんだ神社の「お守り」として商品化できる可能性が高まっている。昨年、漢方薬の原料として商品化に成功したばかりのゴシュユに、意外な分野から新たな道筋が見つかった形だ。各地の神社にいかに取り入れてもらうかが課題だが、営業活動次第で大きな進展が期待できるのではないか。

 同研究所は、自然豊かな青葉山麓の環境をまちづくりに生かそうと2013年に発足した。活動の一環として薬草栽培・販売事業を展開。町内に薬草育苗センターを完成させたほか、薬草関連の町施設の指定管理者となるなど、着々と地歩を固めている。

 ゴシュユは元々、同町内に群生地があった。同研究所では栽培・加工技術など専門知識の習得や研究を続け昨年、京都府の生薬問屋への納入にこぎつけた。これを受け栽培面積を本年度、千平方メートルから7千平方メートルへと7倍に広げている。

 お守りへの活用は今年7月、岡山県の神社から問い合わせがきたのがきっかけ。かつて重陽の節句向けに、ゴシュユの実を袋に入れた「茱萸嚢(しゅゆのう)」というお守りがあったとのことで「復活させたいので、ゴシュユを提供してほしい」という話だった。

 漢方薬の材料として国内に流通するゴシュユは近年、中国からの輸入に頼っているが、神社だけに国産にこだわりがあるという。同研究所関係者にとっては全く考えたこともなかった話だったが、半面、一気に視野が広がった。

 同研究所によると重陽の節句とゴシュユは古来、菊花とともに密接な関係を持つとされる。ただ、国内で栽培が始まったのは江戸時代以降ということもあり、ゴシュユの代替品として同じような赤い実を付けるグミを代用してきた経緯がある。問い合わせてきた神社が象徴するように、茱萸嚢が伝わっているのはわずかというのが現状だ。

 商機とみた同研究所では、まずは茱萸嚢の認識を高めることが先決と今年の重陽の節句に、菊花祭を営んでいる京都府の石清水八幡宮に奉納を企画、実現させた。神社界にゴシュユを印象づけ、キックオフとしては上々といえそうだ。

 初詣など神事は国民にとって関心が高いものだけに、茱萸嚢の商品化が全国展開できれば飛躍的な発展が見込める。努力を続けてきた同研究所へのまさに「神の恵み」といったところだ。同研究所の漢方薬分野での商品化の歩みを見ると、今後の展開に大いに期待が持てる。町の産業振興、雇用拡大とともに、青葉山を薬草の聖地として一段と飛躍させてもらいたい。

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