【論説】沖縄県知事選がきょう投開票される。米軍基地問題を巡り、国と鋭く対立してきた翁長雄志(おながたけし)知事の死去を受けた選挙である。安倍晋三政権が総力を挙げて支援する佐喜真淳(さきまあつし)氏(54)と翁長氏後継と目される玉城(たまき)デニー氏(58)による事実上の一騎打ちは、異様なほど過熱したまま審判の時を迎える。

 最大の争点は、基地問題のなかでも普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古への新基地建設問題である。沖縄県民の判断はそのまま日本の安全保障体制に関わる。事はひとり沖縄だけの問題ではない。他県のわれわれも、政治ショーのように眺めてはいられない。

 ■政治闘争の観■

 普天間返還で日米が合意したのは、橋本龍太郎政権下の1996年4月。曲折を経ながら、代替施設の用地が辺野古に決まった。だが、政府や米海兵隊の意向などもあって施設内容は二転三転し、規模が大きくなり続けた。

 この20年余りの間、沖縄では米兵、軍属による凶悪事件や軍用ヘリなどの墜落事故が絶えず、基地を巡る県民の怒りが膨らんでいた。

 こうした民意が押し出したのが翁長県政である。前任知事による辺野古の水面埋め立て承認を翁長氏は取り消し、法廷闘争も展開した。それは安倍政権との政治闘争の観があった。

 翁長氏の執念の背景には、国土のわずか0・6%しかない県に、日本に駐留する米軍基地の7割以上が集中する不条理があった。本土の基地は過去に縮小したのに沖縄の負担が変わらない事実は、差別にほかならないとの思いだったとされる。

 その思いが多くの県民の意志を代弁するものだったのは、最近の各種調査でも明らかだ。県民の7割は辺野古建設に反対しているのである。

 ■辺野古以外にも策■

 沖縄ばかりがなぜ、苦難を背負わなければならないのか。同じように米軍基地のある各国に比べ、日本は米国に配慮しすぎではないか―。

 責任は、沖縄県民をはじめ国民の多くが持つ疑問と真剣に向き合ってこなかった歴代の日本政府にもあるだろう。

 ただ安倍政権は、基地問題を主導する菅義偉官房長官が辺野古建設を「唯一の解決策」として強硬策を取り、翁長氏と敵対し続けてきた。国が地方を押しつぶすような対応は、対等であるべき関係を覆すものであり、苦言を呈さざるを得ない。

 今回の知事選では、翁長氏の遺志を継ぐと明言する玉城陣営に対し、与党幹部らを総動員して佐喜真氏を支援している。一方で、佐喜真陣営は辺野古問題について態度を明らかにしないままだ。「争点隠し」と非難されても仕方のない姿勢だろう。

 内外の専門家の多くは、辺野古以外にもさまざまな解決策があると指摘している。普天間の危険を除くには、例えば米軍の部隊編成の変更や機能の分散といった手法も考えられる。普天間の返還に伴う解決策として、辺野古に固執するのは「政治的」すぎるというのである。

 ■本土にも議論の芽■

 国民的議論の結果、普天間の代替施設が必要となれば本土で建設地を決めるよう求める―。そんな内容の陳情が東京・小金井市会の本会議で採択された。

 定数24のうち自民、公明会派などを除く13人が賛成したという。この一事をもって、基地負担を沖縄と分かち合う機運が広がるとみるのは楽観的すぎるかもしれない。だが長年、沖縄県民の苦難に目をつぶってきた本土にも、ようやく議論の芽が出てきたとはいえる。

 東西冷戦後、中国の台頭なども相まって世界に与える米国の影響力が相対的に低下しているとされる。当面最大の脅威と見なされてきた北朝鮮の姿勢にも変化が見られる。

 沖縄県知事選の結果がどうであれ、これを機に国民も日本の安全保障のあり方を考えるべき時期に直面しているのは間違いない。

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