【論説】米中の「貿易戦争」は、双方が第3弾となる制裁・報復関税の発動を発表。泥沼化が進行している。ここへきて中国側には、対立の長期化に備える動きが目立ち始めた。米政権も、11月の中間選挙を過ぎても、2年後の大統領選までは拳を下ろさないとの見方がある。世界経済への影響は避けられず、日本は対応を急がねばならない。

 トランプ大統領が、年2千億ドル(約22兆円)相当の中国からの輸入品に対する追加関税を発表したのは17日。これを受ける形で中国国営の新華社は、電子商取引最大手アリババグループが米国でのサービス拡大を撤回すると報じた。

 同グループの馬雲(ばうん)会長は2017年1月、米国で5年間に100万人の雇用を創出する計画をトランプ氏に伝えていたが、新華社のインタビューで「友好的な協力に基づくもの、という前提が壊された」と撤回理由を説明した。

 馬氏は19日の講演でも、貿易摩擦は「2カ月、2年では解決しない。20年続くと考えた方が良い」と述べている。中国を代表する企業のこうした見方は、政府の考え方と無縁ではないだろう。

 中国側の報復関税第3弾には、液化天然ガス(LNG)が含まれていることも象徴的だ。LNGは昨年11月、トランプ氏と習近平(しゅうきんぺい)国家主席の会談でまとめられた約28兆円の「巨額商談」の柱の一つ。中国向け輸出を念頭に、アラスカ州での開発に中国が参画するとされていた。

 中国は、LNGの調達先を中東などに振り替えようとしている。大豆など農産物の輸入先も、中国の目は米国以外へ向いている。貿易摩擦の長期化をにらみ、国際ビジネスの姿は次々と変化している。

 17年の米国の中国からの輸入は約5千億ドル、対中輸出は約1300億ドル。これまでの双方の制裁・報復関税対象の合計は米国が2500億ドル、中国が1100億ドルで、貿易額でみれば米国の方が制裁を発動する余地が多い。

 しかし、中国側は、企業と連携したり、場合によっては民衆の不買運動を利用したりすることもあるとされる。世界貿易機関(WTO)事務局長は「両国には多くの“弾薬”がある」との言い回しで長期化を懸念。摩擦の先行きはまだ見通せない。

 経済協力開発機構(OECD)が20日発表した18、19年の経済見通しは、世界全体の実質国内総生産(GDP)予測を下方修正した。米中摩擦の影響が顕在化してきたといえる。

 自民党総裁選で連続3選を果たした安倍晋三首相には、困難なかじ取りが迫られよう。海外の好調さにけん引されてきた景気回復に米中摩擦が影を落とせば、来秋の消費増税にも影響が及びかねない。26日の日米首脳会談で、どんなメッセージをトランプ氏に伝えるかが注目される。

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