津田寛治さん

 「ここに福井シネマがあるのが、私にとっての福井駅前の風景だった」。福井の映画文化を約100年にわたり支えてきた福井県福井市の福井シネマ。慣れ親しんだ映画館が閉館することを知った映画ファンや市民は一様に驚き、惜しむ声が次々と寄せられた。

 同館でアルバイト経験がある同市出身の俳優、津田寛治さんは「僕がまだ少年だったころ、福井シネマでたくさんの邦画を夢中になって見た。夢中になり過ぎて高校2年の時に売店のアルバイトまでしました。たくさんのドラマをありがとう。そしておつかれさま、いとおしい福井シネマ」とメッセージを寄せた。

 半世紀以上の歴史を持つ県内の映画愛好家団体「福井映画サークル」の山下善久代表は幼い頃から同館に通い、小松左京原作のSF映画「さよならジュピター」を観賞したのが思い出深いという。「シネマコンプレックス(複合型映画館)やホームシアターが普及し、経営は厳しいんだろうと思っていたが…」と絶句した。

 この日、息子の悠之介君(6)と福井シネマを訪れた福井市の武本真紀さん(44)は「子どもの時から通っていて、ここに映画館があるのが駅前の風景だった。とても寂しい」。親子で仮面ライダーやドラえもんの映画をたびたび見に来ており、「これからはどこの映画館に行けばいいのか」と困惑気味だった。

 「地元資本の映画館が3館(福井シネマ、テアトルサンク、メトロ劇場)も駅前にある地方都市は珍しい」と話すのは、福井駅前短編映画祭の主催者で、和歌山大観光学部の木川剛志准教授。「どの映画館も映画事業は楽ではなく、それ以外の不動産収入などで穴埋めしている部分もあるのではないか。それでも映画館を続けるのは、文化を残そうというともしびであり、市民には映画館があることの豊かさをもっと知ってほしい」と話していた。

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 映画館の福井シネマ(福井県福井市順化1丁目)が9月10日で営業を終了する。1919年に開館した県内初とされる本格的な常設映画館をルーツとし、福井空襲や福井地震の惨禍も乗り越えて市民に親しまれてきた県内の娯楽の草分けが、約100年の歴史に幕を下ろす。来館者の減少による営業不振のためで、跡地では別事業が予定されている。

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