「注文をまちがえる料理店」でエプロン姿で接客する認知症の高齢者=5月、静岡県御殿場市の「とらや工房」

 「お待たせしました」。店員のおばあちゃんが緊張の面持ちで、お汁粉をテーブルに運んできた。置かれた席の男性が注文したのは、どら焼き。だが、いらだったり怒ったりする様子は全くない。「あ、それはこっちのお客さんだね」。助け舟を出されたおばあちゃんは「あら、やだ。素人でごめんね」と照れ笑い。客席にもほほえみがあふれた。

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 ここは「注文をまちがえる料理店」。接客と配膳を担当するのは、全て認知症の人たちだ。コンセプトは「間違えちゃっても、まぁいいか」。介護事業者や飲食業の有志による実行委員会が2017年6月から、東京都内のレストランで期間限定イベントとして始めると、国内外のメディアに取り上げられて大きな話題となった。

 発案者はテレビ局ディレクターの小国士朗さん(38)=東京。「徘徊したり暴言を吐いたりして怖い」という認知症に対するネガティブな先入観を、グループホームの取材でひっくり返されたのがきっかけだった。「拍子抜けするほど皆さん『普通』だった。そんなふうに思い込みが外れる場をつくりたかった」

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 今年5月に開かれた会場は、静岡県御殿場市にある老舗和菓子店「とらや工房」のカフェ。地元の介護施設を利用する80代中心の認知症の男女12人が、そろいのエプロンを着けて交代でホールに立ち、県内外から約120人の来店者を迎えた。

 注文を間違える以外にも、予想外の行動は起きる。注文を取りに来たはずが客席に腰を下ろして話し込んだり、配膳と同時にお茶のお代わりを求められて混乱したり。お汁粉の付け合わせの塩昆布が残してあるのを見つけると、「もったいないから食べなさい」とつまんで口に運んであげようとする場面もあった。

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