今年6月、東京・日本橋にオープンした富山県の「日本橋とやま館」。外観も店内もなかなかおしゃれ。もし「アンテナショップ」が民間運営だったら、営業が成り立つだろうか(撮影:今井康一)

 かつて、この連載で「なぜ道の駅は儲からなくても店を出せるのか」というコラムを書き、大反響を頂戴したことがありましたが、今回は「その都市版」とも言える「アンテナショップ」について取り上げます。

 ■採算性は二の次、「地元のPR」という「錦の御旗」で運営

 東京都内にあるアンテナショップは現在55店、そのうち42店舗は都道府県、13店舗は市町村が整備しています(地域活性化センターの「平成27年度 自治体アンテナショップ実態調査結果」)。売上高だけをみても7億円以上は北海道、広島、沖縄の3自治体だけで、1億円以上7億円未満が26自治体となっています。

 それでは、このような経営規模でアンテナショップは魅力的な店舗経営を行い、採算性も確保され、バリバリ営業成果が生まれているのでしょうか。

 冒頭から結論を言うのもなんですが、そもそもアンテナショップは「自治体のPR」や「特産品のPR」という話が開設目的の上位2位を占めています。

 「税金を使ってPRができればOK、別に商売のためだけに経営しているわけではないよー」、ということなのです。例えば広島県アンテナショップの開設時の監査報告書によると、「費用対効果について事前の検証は行わなかった」ということが記されています。

 しかしながら、昨今は「行政評価」などもなされるため、どこのアンテナショップの資料をみても、来客数と売上高が全面に出て「◯万人きています」「年商◯億円売れています」とアピールするわけですが、売上高がどれだけあっても、経費がそれ以上にかかれば赤字になります。

 本気で事業性と向き合う気があるのであれば、今後は売上高だけの表記ではなく、しっかりと「利益」金額を表記して競って欲しいものです。

 ■売上高1億円を挙げても実態は赤字、それが永遠に続く

 また、地方自治体は「『地元PR』をするためには有名な立地に出店しなくてはならない」と、地方の人でも誰でも知っている「銀座」「有楽町」「日本橋」などの立地をこぞって選択します。言うまでもなく、日本で一番家賃が高い場所、といっても過言ではない立地です。

 不動産調査会社のCBREによれば、銀座における、1F部分の平均的な月当たりの賃料(月坪、1坪=約3.3㎡)は、メインストリートでは最低でも15万円以上。ひと回り外でも6万円〜、さらに外れでも3万円に達します。

 ということは、平均的な30坪の店を出すと、最良の立地だと450万/月〜、年間でいえば、5400万円に達します。さらに2F、3Fは路面よりは安くなるとはいえ、イベントスペースや事務所なども確保して、1-2Fを借り切ったアンテナショップなどを経営しようと思えば、年間家賃だけでもとてつもない金額に達することが分かります。しかも、ここに、さらに初期の内装設備投資、毎月の水道光熱費や人件費などがかかってきます。

 一方で、売っている商品の多くは、数百円から高くても数千円の食品や調味料などが基本です。さらに小売販売なので、売り上げからとれる粗利益率(人件費などを加味しない「素」の利益率)は20%〜30%程度です。

 とすると、1億円売り上げたところで、多くても3000万円程度の粗利であり、ここから初期投資の回収をしながら家賃や人件費や水道光熱費などの支払いを賄うことになるわけで、到底足りません。結果として、各自治体のアンテナショップには、年間数千万〜数億円の予算が組まれており、つまりそれだけの赤字を税金で補填しなくては店が存続できないというわけです。

 実際に、民間のフジテレビ系列がやっていた地方の物産を集めた「銀座めざマルシェ」は銀座にオープンしたものの、2年持たずにあえなく撤退しています。行政によるアンテナショップは、民間には不可能な採算度外視店舗なのです。

 なぜ採算を度外視してまでも、自治体はこぞって出店するのでしょうか。ここで問題なのは、「地方の商品が売れないのは、知られていないからだ」という、地方と生産者と都市にいる顧客の「情報の非対称性」を理由にしたりする人がいることです。

 ■アンテナショップの悲しいリアルとは

 しかし、もはや今は昔と違って、東京都内の百貨店のデパ地下、駅ナカ、さらにはスーパーに至るまで、地方食材を多様に取り扱っています。さらにインターネットもあるため、一等地に店を出すだけで、多くの人に良さが伝わり売れる、なんて都合のいい話はそうそうありません。「売れないものは売れないだけの理由」があり、むしろ、知られたらまずいことが認知されて、もっと売れなくなるなんて皮肉なこともあります。

 

 結局、アンテナショップには一見良さそうに見える「地域縛り」で集められた、バイヤーも買い付けしない、ネットで消費者も指名買いしないような「売れない地元商品」を、とんでもない家賃の立地にそろえることになります。もちろん、さすがにそれだけではお客様も来ないので、「地元の有名な商品」も取り揃えて抱き合わせて売り場を作って客を集めている、というのがアンテナショップのリアルなのです。

 しかし、そもそも地元の有名な商品は、アンテナショップなんかに行かなくても、デパ地下でもスーパーでもネットでも買えるし、売れているものがほとんどです。それらを、わざわざ税金をかけた店で売るのもバカバカしい話でもあります。

 さらに通常では東京の売り場に置かれないような「売れない地方商品」を税金を使って東京の売り場に並べ、結果的には採算度外視で安価に販売しているのも滑稽な話です。売れ筋も死に筋も一緒にして、税金で採算度外視で安売りするということは、付加価値を産むどころか、ある意味毀損しているとも言えます。

 一方、各地域のアンテナショップは東京への地方自治体の「基地」として、販路開拓機能も期待されています。しかし、どこのアンテナショップでも「商談成立数」は書いてあっても、それら商談によって従来売れなかった商品がどれだけ流通したのかという金額ベースの話は見当たらないところばかり。まぁ書いていないということは、推して知るべしです。

 本当に地方食材などを東京で流通させたいのであれば、銀座などに置くのではなく、東京都内に展開している店舗への営業を行うのが基本です。銀座の一等地に店を構えても、1店舗での売り上げはどんなに頑張っても数億円程度。この売り上げを、置かれている数千アイテムで割り算したら、1地方企業当たりの売上などは雀の涙です。正直、経済的インパクトはほとんどありません。1つのアンテナショップに納めて偶発的な取引任せなんかにしてても成長はなく、例えば都内の5〜10店舗に営業をかけて、売り上げを作ってもらう努力のほうが本筋なのは、自明です。

 ■官民とも「アンテナショップの幻想」から目覚めよ

 東京のアンテナショップだけではありません。昨今では地方産品を、「ふるさと納税」による節税効果をもとにして、寄付者に実質安売りして提供したり、さらには海外への販路拡大という名目でアンテナショップを海外にまで進出させているところもあるのです。

 ここまで来ると、自治体は税金を使って地方物産の商社業務でもやり始めるのか、と思ってしまうところです。しかし、そもそも商売をやるような組織ではない行政が、このような事業をやっても、結局は万年赤字です。税金がどんどん使われ続ける一方、地元企業がその経費以上に儲かって納税金額が拡大する、といった成果までは起きていません。

 本気で商品を売り込みたいというのであれば、ちゃんと民間の卸会社やさまざまな店舗・ネットのバイヤーと付き合い、商品の魅力を伝え、売り込みをする。そして商品の問題点を指摘されたら改善していくという「当たり前なこと」と向き合うことこそ、本当の販路開拓です(地道にやっていらっしゃる民間の方、自治体の方がいらっしゃることも、存じています)。

 一方、民間にも問題があります。当たり前の営業努力をせずに、税金で家賃のバカ高いアンテナショップを開くようなところに、うまいこと話をつけて商品を置いてもらい、自動的に商品が売れることに期待するとすれば、そんな民間企業にも大きな問題があるのです。

 すでに地方産品への注目は十分に高まり、特徴があって市場性のあるものは東京都内や大都市のさまざまな売り場に並ぶだけのチャネルが出来ています。ネットもあります。そろそろ、官民ともにアンテナショップの惰性に任せた経営を見直し、正当な民間主導の販路開拓に戻ってもらえることに期待するところです。(木下斉:まちビジネス事業家)

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