「おばあちゃん、野菜ある?」。高齢者宅を巡り、野菜を集めて回る松本さん(中)と加藤さん(右)=福井県勝山市北谷町谷

「人とつながることで自分の力以上のことができる」と話す吉田さん=福井県敦賀市

「住民にとって当たり前なものに再び価値を見いだすきっかけを作れれば」と話す浜口さん=福井県鯖江市河和田町のPARK事務所

 違うまちに育ったからこそ分かる、福井の魅力がある。県外から福井に移住し、地域に溶け込みながら、まちづくりに積極的に関わる男女4人に、取り組みのこと、実感している福井の良いところを聞きました。そして、もっと良くなるためのアドバイスとは?

 【勝山・北谷町】 松本 かおりさん(兵庫県出身)、加藤 義一さん(埼玉県出身) 「きただに村」スタッフ

 ◎豊かな自然 元気の源

 石川県境にある山あいの勝山市北谷町。「おばあちゃん、野菜ある?」。若い男女が高齢者宅を巡り野菜を集めて回る。2人はNPO法人「きただに村」のスタッフ。高齢者の生きがいづくりにひと役買っている。

 埼玉県出身の加藤義一さん(33)は脱サラして間もない2014年4月から参画。福井県内でグリーンツーリズムのコーディネートをしていた兵庫県出身の松本かおりさん(28)は13年10月から働いている。2人とも、稲刈りなど農林業や伝統料理作りなどの田舎暮らし体験を通して、北谷町の豊かな自然に強くひかれ、活動の場を移した。

 日課は高齢者宅へ出向き、旬の農作物を集める「庭先集荷」。同NPOが運営する北谷町コミュニティセンターの物販スペースで委託販売する。

 当初は、野菜を提供してくれる高齢者はごくわずかだった。「よそ者」と見られ敬遠されたが、足しげく通って話しかけ、顔を売った。努力が実り、今ではほとんどの高齢者が顔見知り。松本さんは「孫みたいにかわいがってもらっている」と充実感を漂わせる。

 野菜を提供してくれる高齢者も25世帯ほどに増えた。お小遣いになると畑の面積を増やす意欲的な高齢者も。加藤さんは「やりがいを持ってもらえてうれしい」と笑顔をみせる。50世帯に満たない北谷町はほとんどが高齢者世帯。お年寄りが元気なら地域も活気づく。

 にぎわいづくりのためには農林業など自然体験を売りに、交流人口を増やすことと、エコツアーの企画にも携わる2人。「北谷が盛り上がるようにサポートしていきたい」と将来を見据えている。

 【敦賀】 吉田 未会子さん 「福女会」代表(秋田県出身)

 ◎人と人の近さ チャンス

 女性企業家セミナーの受講生で「福女(ふくめ)会」を結成し、1年になる。敦賀市で変形木材の販売会社を経営する吉田未会子(みえこ)さん(43)は会の代表として、約30人のメンバーを引っ張り、企業の勉強会を開いたり、各種イベントで実地販売を行う。

 秋田県で生まれ、埼玉県入間市で育った。父の特許技術を生かし、オブジェのような変形木材を販売。さらに、商店街の空き店舗を生かした人材育成も構想している。「敦賀や福井の人と人の近さが、まちづくりにもビジネスにも、力になる」と考えている。

 嶺南に嫁いで20年。実家のある入間市は人口約15万人、県内有数の工業都市だ。「東京のベッドタウンでにぎやかだけど人間関係は希薄。嫁いだばかりの20代は、近所の人間関係が緊密すぎて、病気になりそうだった」と笑う。

 気比神宮の氏子となり、昨年の敦賀まつりの御鳳輦(ごほうれん)巡幸では、宮司の乗るオープンカーの運転手を務めた。まちづくりに取り組む知り合いも増え「人脈がチャンスにつながる。人とつながることで自分の力以上のことができる」と感じている。

 2008年から、ミニジョブカフェ敦賀のキャリアアドバイザーも務めている。敦賀市民の“のんびり気質”が気に掛かるという。「40年も原発が立地しているせいか『お金は落ちてくるもの』という意識があるように感じる」

 敦賀は今、原発再稼働が見通せず、変わらざるを得ない。「人のつながりに加え大都市圏に近い恵まれた環境。地方だからこそ“初の取り組み”もできる。今が意識を変えるチャンスです」と力を込めた。

 【鯖江・河和田】 浜口 真一さん 「PARK」代表理事(神戸市出身)

 ◎ありふれた景色に価値

 「当たり前すぎて見えなくなっている福井の良さに気付いてほしい」。5年前に鯖江市に移住した浜口真一さん(46)=神戸市出身=は一般社団法人「PARK」の代表理事を務め、河和田地区でのイベント企画・運営などに従事。「住民に地元の魅力を再発見してもらうために、移住者ならではの目線を生かしたい」と活動に励む。

 阪神大震災を機に上京し、夢だった音楽プロダクションに就職。転職を考えていた5年前、就職サイトで県の「ふるさと起業家育成事業」を見つけ、再スタートの地に決めた。

 都会育ちなだけに福井の景色は新鮮に映った。大学で歴史地理学を専攻したほど歴史好きで、伝統漂う街並みは魅力的だった。特に漆器や眼鏡など伝統的なものづくりが集積する河和田地区は印象に残り、移住を決めた。一つのことを極め続ける職人の姿も音楽業界で接したアーティストたちと重なって見えた。

 地元で知り合ったU・Iターン者で昨年6月にPARKを結成。住民にとってありふれたものに新たな価値を見いだしてもらうのは“よそ者”の役割と自負し、「住民の古里への愛情を高めることが地域活性化につながる」と力を込める。

 昨年11月には同市片山町でコンサートを開いた。場所は山のふもとにある片山八幡神社。木々に囲まれた社、集落を望める景色はお気に入り。音楽業界にいた際の人脈を生かして河和田のイメージに合った音楽家を招き、音色は集落中に響き渡った。「この場所がこんなにすてきに見えるのは初めて」。参加者のお年寄りの言葉が心に残った。

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