コワーキングスペース「sankaku」で原稿を書く高島記者。ここから生まれるプロジェクトや商品を発信していきたい=15日、福井市中央1丁目の「これからビル」

 コワーキングスペース「sankaku(さんかく)」のオープン直後、福井県内のプログラマー3人が利用してくれた。無線LANにパソコンを接続し、携帯アプリの制作に励む。3人の職場はばらばらだが、休日に集まり、それぞれの得意分野を生かしてアプリコンテストに応募するのだという。

 IT企業経営の上坂哲教(あきのり)さん(34)=永平寺町=は「ビジネスにつながるものを作りたい」と意気込む。会社員の伴幸祐さん(27)=福井市=は「起業を目指して人脈を広げようとしている若者は多い。意欲がある人が集まる場所として、コワーキングスペースは親和性が高い」。

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 福井市中心部の中央1丁目に立地する事業所数はこの20年で約300軒減り、従業員数は約2千人減少した。イベントでまちなかの交流人口を増やすことは大切だが、働く人や住む人を増やさないことには継続的なにぎわいは生まれない。上坂さんのような若い人材を呼び込もうにも、県外に進学した学生のUターンする割合は減り続けている。まちなかに事務所を構えるあるデザイナーは「力のある若手は都会に出ていってしまう」と嘆いていた。

 彼ら3人は「シンプルな空間が居心地よかった」と帰っていった。sankakuが組織にとらわれない、新しい働き方をする若い世代の居場所として成長していけば、U・Iターンを考える都会の人たちに、何らかのメッセージが届くかもしれない。

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 8月下旬に知り合った、欧州や米国での取材経験が豊富なフリーライターの松岡由希子さん(奈良県出身)は「海外の知らないまちを訪ねたら、必ずコワーキングスペースに足を運ぶ」という。スペースの利用者と会話を交わすと、そのまちでどんな「コト」が起ころうとしているか、感じられるのだそうだ。

 福井のまちなかから、どんな「コト」を起こせるだろうか。これからは役所の記者クラブではなく、この場所で記事を書くつもりだと松岡さんに話すと「そのアイデア、面白い」と言ってくれた。

 sankakuに集まる人たちから生まれたプロジェクトや商品、イベントをすぐに紙面やインターネットで発信する。それが次の動きの後押しになっていく。そんなシーンが頭に浮かんだ。(高島健)


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 本紙連載「まちづくりのはじめ方」企画班と、福井市中心市街地の商店街有志らによるまちづくり会社「福井木守(きまも)り舎(しゃ)」が昨年11月、発足した。遊休不動産を活用したまちの再生に向け、第1弾事業として同市のガレリア元町商店街にある空きビルを改修した交流と創造の拠点「これからビル」を7月にオープン。1階で「まちのリビング」をイメージしたカフェ「sumu(すむ)」の営業を始めた。3階は、多様な業種の人たちが働く場を共有できるコワーキングスペース「sankaku」。記者が仲間の協力を得ながら壁の塗装や机の木工を手掛け、9月1日に開設した。

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