「これからビル」1階のカフェリビング「sumu」で開いたプレオープンイベント=6月28日、福井市中央1丁目

JR福井駅西口周辺の街並み。「これからビル」を、まちに変化を生む起点の一つとしたい=2014年11月、福井新聞社ヘリから撮影

改修工事中の「これからビル」。壁板の撤去後に予想外の工程追加もあった=5月21日、福井市中央1丁目

「sumu」店内から見える広場「ガレリアポケット」(写真奥)=6月28日、福井市中央1丁目

 「ついに、ここまで来たね」。福井新聞連載「まちづくりのはじめ方」企画班の活動に協力してくれた人たちから笑顔を向けられて、ようやく実感が湧いてきた。企画班が参画する民間出資のまちづくり会社「福井木守り舎(きまもりしゃ)」が、福井市のガレリア元町商店街の空きビルを再生した、交流と創造の拠点「ふくいこれからビルディング」。1階飲食店のカフェリビング「sumu」(すむ)の開業をもって、7月5日にオープンする。

 6月28日、完成したばかりの店で開いたプレオープンイベント。商店街の人たちや事業に携わった関係者、市職員ら約40人を招き、福井の食材を使った立食メニューを楽しんでもらった。企画班と連携してくれた料理家や、まちづくり団体の皆さんも門出に花を添えてくれた。

 昨年初めにゼロから手探りで始めた記者のまちづくり。人とつながり、拠点ができたのは大きな節目だが、あくまで通過点。会場でのあいさつには、そんな思いを込めた。「このビルで何を生みだしていけるかが楽しみ。これからが本当のスタートです」

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 「福井の食をテーマにしたレストランをつくろう」。地元を楽しみ、誇れるきっかけにしようと、企画班が一つの目標を定めたのは1年半前。最初は期間限定のレストランを想定して活動を始めた。でも、やるからにはと、イベントに終わらせず継続的なまちづくりにつなげる道を探った。今ある建物を新たな用途で生かすリノベーションの手法に活路を見いだし、商店街関係者ら有志と「福井木守り舎」を昨年11月に立ち上げた。やりたいこと、やるべきこと、やれること…。まちの現実や収支と向き合い、「これからビル」事業を計画した。

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 4階建てビルの1階は、まちに「住む」をイメージしたカフェリビング「sumu」。3階は、異なる業種の人たちが交わって働けるコワーキングスペースを準備中。その連動によって「県内各地の食や産業をとらえ直して、新しい価値を生みだしていく場」を目指す。

 まちの郊外化で停滞が続いてきたJR福井駅西口周辺。従来はまちづくりの象徴のように位置付けられてきた西口再開発ビルだが、人口減少と経済縮小が進む中、大規模なハード整備が活性化に直結する時代ではなくなっている。民間の自立した小さな動きの積み重ねこそ、まちを元気にしていく。兆しはすでに、周辺のあちこちにも見えてきている。そんな変化につながる起点の一つとして、「これからビル」をまちの人たちと一緒に育てていきたい。

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 ビル改修は今年5月に着手した。元服飾店の1階は、壁板や床材をはがしてコンクリートの構造体をいったん表面に出し、木製の床や棚、黒板塗装の壁を施した。既存の建物を扱うリノベーション。壁裏から現れた古い配管を撤去するなど、予想外の工程も生じた。改修費は800万円の見込み。厨房(ちゅうぼう)設備の一部には中古品を入れて予算を抑えたが、防火設備で追加費用が必要になった。3階を含めるとビル全体の初期投資は計1500万円程度になる。

 木守り舎の資金は、資本金と借入金を含めて2千万円。運転資金など開業後の必要経費を差し引くと、初期投資をすべてまかなうのは現実的に厳しかった。補助金は当初念頭になかったが、市の支援制度を活用することに。投資回収までの期間は4年程度となる見込みだ。

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 「sumu」が5日にオープンし、事業が動きだす。ただ、目指すところにたどり着くまで、道のりはまだ遠い。

 まずは、ビル隣にある福井市の広場「ガレリアポケット」。利用度を高めようと、ビルと広場を隔てていた壁の撤去を市に提案し、1階部分と広場を一体的に使える環境が整った。行政と連携しながら、公共スペースの使い方を開拓していきたい。企画班を中心にイベントの内容を練っている。

 3階のコワーキングスペースは、自分たちの手作業で少しずつ仕上げていくことにした。完成は1カ月後ぐらいになるだろうか。こちらも、いわば使い方次第。さまざまなアイデアや発想を持った人たちに、いかに活用してもらえるか。新しいプロジェクトにつながる“化学反応”をどう誘発するか。試行錯誤は続く。(細川善弘)

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