コワーキングスペースについて考えたトークイベント。場所よりも大切なのは人=4月5日、福井市中央1丁目のガレリア元町商店街

水上さんから企画班に届いた手紙。福井を思う気持ちが伝わってきた

コワーキングスペースになるビル3階フロア。人をつなぐ仕掛けがポイントだ

 「目指すのは店づくりではなく、まちづくり。いろんな人が集まる場所をつくろう」。空きビルを生かしたリノベーション事業を進める中で、福井新聞まちづくり企画班として、「福井木守り舎(きまもりしゃ)」の一員として、こう思い続けてきた。その鍵を握るのが、ビル3階に設ける「コワーキングスペース(CS)」だ。「CO(共に)」「WORKING(働く)」でコワーキング。異なる職業の人たちが仕事場を共有することで多様なアイデアや情報が交わり、新しいビジネスやコミュニティーが生まれる。柔軟な発想同士の“化学反応”は、福井の元気につながるはず。

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 「スペースをつくるだけでは失敗する。『人』にフォーカスすれば、CSはきっと成功する」。県内ではなじみが薄いCSの可能性を知ってもらおうと、木守り舎が4月にオープン前のビルで開いたトークイベント。北九州市のCS「秘密基地」代表の岡秀樹さんから助言をもらった。

 「小さなイベントをやり続けることが大事。どう人を招き入れ、いい経験をしてもらうか。それを常に考えている」。東京のCS「Impact HUB Tokyo」スタッフの高野誠大(ともひろ)さんも、人をつなぐ仕掛けがポイントだと強調した。価値観や課題を共有する人たちの集まりから、コラボレーションが生まれるかもしれない。新会社が立ち上がることだってある。秘密基地では行政と連携し、社会問題を解決する取り組みが始まっているという。

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 「若いときは福井のまちがとてもつまらなく感じていたのですが、最近は帰郷するたびに福井への思いが強くなっています」。トークイベントの2週間前、企画班に一通の手紙が届いた。差出人は名古屋市でデザイナーとして活躍している福井市出身の水上晃一さん(42)。将来、デザインを通して福井のために役立ちたいとの思いが、文面から伝わってきた。

 「福井の駅前で市場をしたい、映画や音楽のイベントがしたい。まだやり方は分からないけど…。若者たちが『福井も面白い』と感じることをやりたい」。トークイベントの最後に男性が手を挙げ、緊張で言葉を詰まらせながらも熱く語った。水上さんだった。気持ちのこもった言葉に会場から大きな拍手が起きた。CSに呼び込まなければならない人は、目の前にいた。

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 「ビル全体の事業費の中でCSにかけられる予算はこれくらいしかない」。5月28日の木守り舎の打ち合わせで、CS事業の責任者を務める阿部俊二取締役から最終的に示された金額は、1階の飲食店に比べると心もとないものだった。ビルの“顔”は飲食店だから仕方ない。DIY(日曜大工)でも何でもやって、空間をつくるしかない。場所ありきではなく、人ありき―。岡さん、高野さんの助言を再度、胸に刻む。

 「アイデアのある人が3人集まれば、それぞれが頂点となって『三角形』になる。三角形はとんがっている。とんがったアイデアでどんな壁も突き破ろう」。そんな思いを込め、CSの名前は「サンカク」に決めた。まずは、どんなイベントを起爆剤にして人に集まってもらおうか。毎日そればかり考えている。

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