福井木守り舎がリノベーションで活用するビル(右)。「福井の『これから』をつくる」がコンセプトだ=福井市中央1丁目のガレリア元町商店街(日本空撮マルチコプターで田川義信撮影)

 「福井はアピールが足りないんじゃないですか」。首都圏から県内に移り住んだ若者に、不満をぶつけられたことがある。ブランド総合研究所(東京)の昨年の調査では、福井県の魅力度は47都道府県中45位。まちづくりや観光の関係者は「いい素材はたくさんあるはずなんだけどね」と自嘲気味に話していた。

 福井新聞まちづくり企画班は、そんな風潮に一石を投じたかった。福井の「いい素材」を代表する食と伝統工芸に光を当てることで、県民自身が地元をもっと誇れる場をつくりたい、と。

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 商店街が集まる福井市中央1丁目は、商業のまちだとされてきた。ところが現状を見れば、1階の空き店舗率は約2割。市の家賃補助があっても、活用した出店者の約2割が1年以内で退店している。従来のような商業だけに頼る活性化はきっと限界に来ていて、新しい働き方や稼ぎ方を実現できる場がエリアに求められている。

 だから、リノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)で食の拠点をつくるといっても、ただ飲食店を繁盛させるだけじゃ不十分。ガレリア元町商店街の空きビルと、隣にある市の広場「ガレリアポケット」の一体的な活用で、何を生みだせるのか。

 福井を発信し、人が交わり、ビジネスが生まれる場所に―。まちづくり会社「福井木守(きまも)り舎(しゃ)」で描いたたたき台を、事業計画を話し合う勉強会で示すと、建築士の丸山晴之さん(43)、市の第三セクターまちづくり福井の前田浩貴さん(28)らのアイデアが乗っかっていった。

 「福井県人が『福井』を発見できるアンテナカフェを」

 「地域の野菜や伝統産業を使って、県内外に『福井』を売り出すスタジオに」

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 昨年12月、木守り舎の阿部俊二取締役が、みんなの意見を文書にまとめた。

 福井に根づく食や伝統工芸を生かしつつ、それらを題材に新しい商品やサービスを生みだし、これからの福井をつくっていく場にしよう。その名も「ふくいこれからビルディング」(仮称)。

 「これからビル」(仮称)の1階は飲食店。地元の食材と伝統工芸を生かしたメニューを提供する。ロフト風の2階も客席にできる。

 3階はシェアオフィス。デザイナーやフードコーディネーターら10人程度が賃貸で入居する。

 4階は現在のまま住居とし、ビルに関わる人ら2人でのルームシェアを想定。

 隣の広場「ガレリアポケット」は、福井市やまちづくり福井と連携し、オープンカフェやマルシェ(市場)の会場として活用する。

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 各フロアの機能は以上の通りだが、ポイントはそれらの連動性。ビルと広場を合わせた空間全体の相乗効果で生みだす付加価値が、この事業の売りになるというのが勉強会メンバーの共通認識になっていった。例えば…。

 「1階の仕入れ先になった野菜の生産者が、3階のデザイナーと6次産業化の新商品を開発できたら面白い」

 「それなら、2階が商品化の相談窓口として使える」

 「生まれた商品やメニューは1階の店にフィードバック(還元)して販売しよう」

 生産者とのつながりは、企画班が県内各地を巡る野外レストラン「ふくいフードキャラバン」が足がかりになる。意欲ある生産者には、マルシェで直売の場を提供。そこから商売が成長すれば、周りの空き物件に店を出すストーリーも描ける。まちや地域への波及が見込めそうだ。

 事業収支も現段階での見通しが立った。1階の売り上げと3、4階の賃料から収入を見込み、建物改修や設備にかける投資は3年程度で回収できる範囲に設定した。

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 2月9日。北九州市小倉北区の中屋ビルで、勉強会の一同が顔をそろえた。民間主導のまちづくりを志す各地のグループが、専門家の指導を受ける「家守(やもり)ブートキャンプ」に参加するためだ。

 日程は3日間。グループそれぞれが地元で始めようとしている事業計画を持ち込み、自立して継続できる事業の組み立て方や経営感覚を一からたたき込まれる。試練の始まりのようで、緊張感が高まってきた。

《これまでの歩み》

 「まちは自分たちでつくるもの」をモットーに、記者3人とデスク1人のまちづくり企画班が昨年春に始動。地産地消のレストランづくりを目指し、県内4市町で野外レストラン「フードキャラバン」を、JR福井駅西口の空き店舗で食のイベントを開いた。リノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)の手法に可能性を見いだし、福井市の商店街有志らと11月、まちづくり会社「福井木守り舎(きまもりしゃ)」を設立。同市のガレリア元町商店街にある広場「ガレリアポケット」に隣接する4階建て空きビルを舞台に、食の拠点づくりを進めている。

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