ビル内の特徴を説明するオーナーの近藤輝夫さん(右)。木守り舎の取り組みに理解を示し、賃貸を決めてくれた=2014年12月、福井市中央1丁目

レジカウンターの前に立つマネキン。2010年まで営業していたビル内の服飾店は郊外に移転した=2014年12月、福井市中央1丁目

 「借りてもらう方としても、どうか一つお願いしますという気持ち。地域が活性化してくれたら、それでいいんや」

 福井市中央1丁目のガレリア元町商店街にあるCALM(カーム)ビルのオーナー、近藤輝夫さん(72)は人懐っこい顔で語った。まちづくり会社「福井木守(きまも)り舎(しゃ)」のリノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)の取り組みに理解を示し、賃貸を決めてくれた。

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 CALMビルは築約50年。近くのサンロード北の庄商店街で長く商売をしてきた近藤さんが、かばん店を営んでいた前のオーナーから2007年に購入した。長男が服飾店を開いたが、約3年後に郊外のショッピングセンターに移転。以来空きビルとなり、仕入れ品の倉庫代わりに使いながら将来の活用を模索していた。

 この間、立地の良さに目を付けた関西資本の飲食チェーンから、北陸進出の足がかりにと賃借を持ちかけられたこともあった。だが、断った。「“個人プレー”で判断するんじゃなくて、もっとまちのためになる活用の仕方があると思ったから」

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 周辺商店街には、放置状態の空き物件が目に付く。オーナーにすれば、古い建物に投資して改修しても、テナントに入ってもらえないリスクがある。「借り手がいなくても、そもそも経済的に困っていない」との声も聞かれる。その結果、建物の放置が続き、まちは停滞してきた。

 木守り舎が扱いたい物件は「オーナーが理念に賛同してくれ、資金面でも協力的であること」(加藤幹夫社長)が条件の一つ。その上で、オーナーに一定期間の家賃を保証して建物を借り、各フロアの入居者から受け取る賃料などで、改修に投じた資金を回収する。利益が出れば、次の事業に再投資する。

 近藤さんはこちらの負担が減るようにと、抑えた家賃設定にしてくれた。「少しでも早く利益を上げてもらった方が、次の物件に移れて、地域の価値が上がるんだから」。まちへの貢献、というよりも、まちの当事者としての決断だろう。思いに応え、「次」につながる成功例をつくらなければ…。(細川善弘)

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