福井木守り舎が食の拠点として活用する空きビル(右)と市の広場「ガレリアポケット」=3日、福井市中央1丁目のガレリア元町商店街

「食の拠点」予定地

 北陸新幹線の金沢までの開業が来月14日に迫り、金沢、富山市は晴れの日を待つばかり。福井県は置いてけぼり―。表面的な構図はそうだが、実は福井でも以前から先行投資の動きが見え隠れしていた。

 JR福井駅西口の再開発ビルは2016年春の開業に向けて工事中。ビルの隣ではホテルの建設計画が進んでいる。そのすぐ近くでも、複数の地権者を巻き込んだ再開発が取りざたされている。「いま商売するなら駅前」「ここ5年ほどが勝負」。いずれは来る新幹線を見越し、期待を込めたささやきが漏れ伝わる。

 まちづくり企画班が第一歩を踏み出した昨年初めが、こうした“胎動”の始まりに当たるだろうか。企画班の参画するまちづくり会社「福井木守(きまも)り舎(しゃ)」は、次第に熱を帯びる成り行きをにらみながら動きだしたのだった。

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 木守り舎は、空き店舗を最小限の投資で再生しながら、まちを元気にする事業を根づかせる。この「リノベーション」の手法を活用し、自分たちの身の丈に合ったやり方で、まちの“地力”を育てていくのが役割だ。大きな投資、大規模な整備事業とは、その点で一線を画す。

 とはいえ、まちの構造が変わるような動きがあるなら、変化を受け入れ、むしろ生かしていくことが大切。

 木守り舎がまず手がける食の拠点の物件選びでは、福井市のある計画に着目した。

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 福井駅西口に近いガレリア元町商店街には、アーケード街のちょうど中ほどに「ガレリアポケット」と呼ばれる小さな広場がある。その「ポケット」の底に穴を開ける格好で、市は歩行者専用の通路を整備する考えだ。完成目標は15年度内。実現すればアーケード街が駅前南通りと結ばれ、建設中の再開発ビルなどとの動線が新たに生まれる。

 駅西にいくつも点在する空き物件のなかで、木守り舎が候補に選んだ物件は広場の南に面して建つ。「CALM(カーム)」という名の服飾店だった空きビルだ。


■まちの空間を楽しむ

 鉄筋コンクリート4階建ての空きビルは、昨夏ごろからオーナーと話し合いを続け、賃借させてもらうことに決まった。隣り合う福井市の広場「ガレリアポケット」は広さ約160平方メートル。もともと悪くない立地条件に加えて市の計画が実現すれば、ここは大いに可能性のある場所になりそうだ。

 市の計画通りに歩行者専用通路ができると、この広場とJR福井駅西口の再開発ビルとを結ぶ動線が生まれるだけではない。その動線は、県内唯一の百貨店・西武福井店とガレリア元町商店街とをつないでいる通りに接続し、延長約200メートルの道が出現する。

 この結果、福井木守(きまも)り舎(しゃ)が「食の拠点」にと考える空きビルは、新たにできる四つ辻(よ つじ)の一角を占める形になる。人の流れは確実に変わる。そう予感し、加藤幹夫社長の言葉に力がこもった。「まちにつながっていくゲートのような象徴的なビルにしたい」

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 広場とビルの使い方をセットで想像してみる。これからつくる「食の拠点」はどんな姿になるのか。

 例えば、よく晴れた休日の午後。ビル1階の飲食店から広場に向け、オープンカフェが広がる。笑顔の家族連れ。くつろぐ若者たち。

 パラソル付きのテーブルに並ぶのは、県産食材のこだわりメニュー。まちづくり企画班が昨年から県内各地で開いている野外レストラン「フードキャラバン」で出合った料理も取り入れたい。

 広場の一角ではマルシェ(市場)を開き、仕入れ先の生産者たちがワゴンで米や野菜を直売したり、出来たての料理を屋台で出したり…。

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 もちろん、立地に頼ってばかりもいられない。肝心なのは事業としてどう組み立てるかだ。広場を使いたいというのは、こちらの勝手。「虫が良すぎる」と市に一蹴されるかもしれないし、厳しい利用条件が付くこともあるかもしれない。それでも、まちの空間そのものを楽しめるような、そんな仕掛けをつくってみたい。(文・細川善弘、地図・土生仁巳)


《これまでの歩み》

 「まちは自分たちでつくるもの」をモットーに、記者3人とデスク1人のまちづくり企画班が昨年春に始動。地産地消のレストランづくりを目指し、メニュー考案の一環で、6月から県内4市町で野外レストラン「フードキャラバン」を開いた。10月には、JR福井駅西口の空き店舗で2日間限定のレストランも。リノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)の手法に可能性を見いだし、地元商店街有志らと11月、まちづくり会社「福井木守(きまも)り舎(しゃ)」を設立。空き店舗を生かした食の拠点づくりに動きだした。

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