福井市中心市街地活性化基本計画の冊子を手に取ってみる。官民が共有できる明確なビジョンは見当たらない=同市中央1丁目の福井駅前電車通り

まちづくりは民間主体の時代。行政に求められる役割とは何だろう=福井市役所

 「飲みながら語れる場所をつくらなあかん。俺は毎日行くよ」

 「僕はやっぱり、地域のおばちゃんらが作るような料理を楽しむところにしたいですねえ」

 まちづくり会社「福井木守(きまも)り舎(しゃ)」が動きだした。空き物件のリノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)で食の拠点をつくる。事業計画の打ち合わせには、取締役4人のほかに、プロジェクトを応援する立場から行政関係者や建築士らも加わった。

 初回の議論はやや拡散気味になった。それぞれが、異なるまちの将来像を描いているからだろう。そのイメージをそろえるのが先決かもしれない。

 「まずは対象のエリアが今後どうあるべきかを再定義する。どんな事業をやるかは、それによって変わるはず」。リノベーション先進地の北九州市で、こんな説明を受けた。確かなエリア像を描くこと。そう、それが“一丁目一番地”だ。

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 では、JR福井駅西口の一帯、商店街が集まる福井市中央1丁目はどんな将来像を目指すべきか。

 市が定める「第2期中心市街地活性化基本計画(中活)」の冊子を引っ張り出した。2017年度までの5年で取り組むまちなか活性化策の指針になっている。

 全体テーマは「官民協働のまちなかにぎわいステージづくり」。時代に応じてか、文言では「民」の力に触れてはいる。だが中身はというと、苦しい。

 盛り込まれたのは88もの事業。それらを実施する主体はとみると、ほとんどが市や第三セクターまちづくり福井、または行政の補助を受ける公共交通事業者だ。1出会う2暮らす3遊ぶ―の都市機能を充実させるために事業分野も広い。ある商店街の組合幹部は「総花的で方向性がはっきりしない」と冷めた評価をした。現場に立つ事業者や市民団体の本音を代弁しているようだった。

 官民がエリア像を共有できるビジョンは、見当たらない。

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 北九州市は中活に加えて10年度、深刻化してきた空き物件問題をとらえ、独自の都市政策として「小倉家守(やもり)構想」を定めた。

 目標は、産業振興とコミュニティー再生。その手段がリノベーション。民間の知恵や資産を集めるべきポイントを、はっきり打ち出している。

 ことし2月に福井市内で講演したまちづくり会社「北九州家守舎」の嶋田洋平代表取締役は、こう語っていた。「この構想には、行政の立場と民間の課題を重ね合わせて、同じ方向を向けるようなプロセスが込められている」

 まちづくりは民間の団体や個人が主体となり、自らできる範囲のことをやっていく。そんな時代になったのだと思う。まちづくり会社「福井木守(きまも)り舎(しゃ)」も、そう考えて発足した。人口が減り、経済は縮小して、自治体の財政はひっ迫している。「行政頼み」の考え方は限界にきている。

 でもだからといって、行政の役割や責任がなくなるわけではない。県内自治体のまちづくり政策に携わる大学准教授は「まちのビジョンを描くのは、やはり行政の役目」と強調していた。

 民間にしても時間とお金は限られる。それらを効果的に使うには、市民みんなが同じ“ゴール”を目指している方がいい。そのゴールを描き、具体的な政策にして道筋を示すのが行政、ひいては首長の仕事だろう。独善に陥らず、現実をふまえ、民意をすり合わせながら。

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 これまではどうだったかというと、役所の担当部署が計画の事務局案をつくり、検討委員会などで了承を受ける。そんな手順が普通だった。

 委員には関係各界の代表者を集めているから、出来上がった計画は「民意を集約した」ということになる。なのに、計画が走り出すと民間はついてこない。

 北九州市の小倉家守(やもり)構想は、策定の過程自体が、従来型とは一線を画す。

 まず、プロデューサーとして東京から清水義次氏を招いた。リノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)によるエリア再生の権威だ。その清水氏が実践例から構想案を示し、それを基に各検討委員がアイデアを出し合った。委員は「実際に活動するのが前提」(市サービス産業政策課)の学識経験者や商店街代表者らで、そのまま事業のプレーヤーに収まっている。

 このようにリノベーションを政策に位置付けることで、取り組みが今後も続いていくという“確信”が民間にも広がったという。

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 「民間主体の取り組みを広げたいが、確実な実現の見通しが立たたなければ、(政策上の)打ち出し方がどうしても弱くなる」。福井市の中心市街地活性化基本計画を担当する幹部職員にも、ジレンマがあるように映った。

 ならば、小さくとも民間が実績をつくる、あるいはその兆しを示す。行政がそれをビジョンに取り込んで、官民で共有できるように体系付ける。そんな道筋をたどれないものですか?

 幹部職員の答えは「民間の動きを追いかけながら、いかに距離を詰めていけるかだろうね」。「民が主役」は前提。あとは行政がいかに柔軟に対応できるか。問題意識を共有できた気がした。(細川善弘)

《企画班の歩み》

 【メンバー】30代後半の男女記者3人と40代デスク1人からなる。「まちは自分たちでつくるもの」がモットー。今春に始動し、地産地消のレストランづくりを目指すが「現実は甘くなかった」。

 【手がけたこと】メニュー作りのヒントにと、6月から県内4市町で野外レストラン「ふくいフードキャラバン」を開いてきた。10月には、JR福井駅西口にあるガレリア元町商店街の空き店舗で2日間限定のレストランも。一方、リノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)という手法に可能性を見いだし、目標を設定し直した。

 【これから】福井駅周辺の地元商店街有志らとともに11月、まちづくり会社「福井木守(きまも)り舎(しゃ)」を設立。企画班を代表して取締役の1人に就いた細川記者を中心に、空き店舗を生かした食の拠点づくりを模索していく。「成算? あります」と細川取締役。

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