古いビルを再生した「メルカート三番街」にあるカフェ「水玉食堂」。リノベーションの動きは周辺エリアにも広がっている=11月5日、北九州市小倉北区魚町3丁目

 JR小倉駅から徒歩7分。「中屋ビル」正面のらせん階段を上って2階の店内へ。カウンター向かいの棚には、昔懐かしい水玉紋の青い湯飲みがずらり。花柄が入ったポットや炊飯ジャーも飾ってある。

 昭和の台所をイメージしたカフェは、その名も「水玉食堂」。卵かけご飯や豚ロース照り焼きの「おひるごはん」は、まさしく“家庭の味”。女性店主(36)は「まちで暮らしながら、まちの人のご飯を作ってるって感じ」と生き生きしていた。

 北九州市小倉北区の中屋ビルは、アーケード発祥の歴史を持つ魚町銀天街とサンロード魚町商店街の双方に面して建っている。築47年。地下1階、地上5階建てで、建築面積約920平方メートル(280坪)と、ちょっとしたショッピングセンター並みの広さだ。核テナントの婦人服店が撤退して約10年間空きビル状態だったが、2011年から各階ごとの再生計画が順次始動した。

 全国から視察が相次ぐリノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)のまちづくりのメッカ。福井に生かせるノウハウを何とか学びたい。

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 最初のリノベーション事業となったのが、水玉食堂が入る「メルカート三番街」。ビル1、2階の東側部分を2~20坪に小さく区分けしたスペースに、30代が中心の個性あふれる起業家10組が入居している。1階には、オリジナルブレンドコーヒーが売りのカフェ、クリエイターの事務所、手作り小物が並ぶ雑貨店…。訪れる客も、やはり若者が多い。

 「みんなと同じじゃつまらないっていう人たちが集まっている。長屋に住んでいるご近所さんっていう感覚」。独立先にこのビルを選んだ照明デザイナーの女性(37)は、居心地に満足げだ。

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 北九州市は、福井県の全人口をしのぐ97万人の政令指定都市だ。だが、リーマン・ショック後、大企業の営業所が次々撤退。10年の中心市街地(約380ヘクタール)の空き店舗率は、福井市と同じ20%近くに高まっていた。

 中屋ビルでは、メルカート三番街に続き、2階にものづくり作家の工房兼ショップを集めた「ポポラート三番街」などがオープン。周辺でも、古い空き家がカフェに、空きフロアがシェアオフィスに生まれ変わった。空き店舗率は約15%にまで減り、魚町銀天街の通行量は約3割増えた。

 魚町でリノベーション事業を仕掛けるのは、民間出資のまちづくり会社「北九州家守舎(やもりしゃ)」。取締役の徳田光弘・九州工業大准教授(40)は、こう指摘する。

 「個別の事業は点にしかすぎなくても、エリアとして戦略を立てて積み重ねていくことで、線や面になっていく」(細川善弘)

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