まちに何が求められているのか。空き店舗活用のアイデアを交わす「福井木守り舎」メンバー=11日、福井市中央1丁目の加藤ビル(中野克規撮影)

 カチャッと入り口の鍵が開けられた瞬間、不思議なわくわく感がこみ上げてきた。空き店舗の内部は、普段見慣れた商店街にあって未知の世界だ。

 まちづくり会社「福井木守り舎(きまもりしゃ)」の設立メンバーは、リノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)の候補とする空き店舗を絞り込んでいた。まず着手するのは、われわれ福井新聞の企画班が思い描いてきた食の拠点づくり。想定する建物の下見をさせてもらおうとみんなで集まった。

 独特の内装やコンクリートむき出しの壁に目をやりながら「これは面白い」。リノベーションは、建物の特徴をなるべく生かして、投資を抑えながら新しい事業を起こす。狭いなら狭いなりに、古いなら古いなりに。どう活用しようかと、想像が膨らむ。

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 「何だかゆったりできて、雰囲気のいい空間だね」

 空き店舗2階に置きっ放しだったソファでくつろいでみせるのは、企画制作会社代表の阿部俊二さん(56)。今回の下見ではオーナーとの仲介役を果たしてくれた。相変わらずフットワークが軽い。

 約10年前から商店街のイベント企画やプランづくりに携わり、まちなかの活性化がライフワークに。「駅前のいいところも悪いところも見てきた」。その上で「理屈じゃなくてとにかく実践」と思い至り、木守り舎参画を決めた。

 空き店舗の分布図を囲んだ会合では「この物件は飲食店に持ってこい」「あそこの大家さんが借り手を探している」。阿部さんの集める情報が事業立案の糸口になっていきそうだ。

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 一方、空き店舗1階奥のスペースを確かめるのは、もう一人の木守り舎メンバー、田邊豊さん(42)。「厨房は、ちょうどこのラインまであればいいでしょうね」

 田邊さんは福井市板垣3丁目で和食店を経営。職場も自宅も、いわゆる中心市街地からは外れている。それでも新会社に参画したのには理由がある。

 「まちなかで住んだり商売をしたりするための環境を整えていくのは自然な流れ。自分が年を取ってからも、住みやすいまちにしたい」。人口減少の時代に合った効率的なまちづくりが念頭にある。

 本業の合間を縫ってエキマエを歩き、店主やビル清掃員にまで話し掛ける。「肩書を持たないような人としゃべった方が、意外とまちのことが分かったりしますよね」。はっとさせることを時々、投げ掛けてくるのが、田邊さんらしさだ。(細川善弘)

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