まちづくり会社「福井木守り舎」の加藤さん(中)と田邊さん(左)、細川記者。空き店舗再生でまちの活性化を目指す=10日、福井市中央1丁目

 「夢を持つのはいいけど、本当にやれるかどうかは別だからね」。店づくりの協力者を探し求める中で、まともには話を受け止めてもらえず、何度も歯がゆい思いをしてきた。

 福井市中心市街地の空き店舗をリノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)で再生し、県内の食をテーマにした常設店をつくる。そこから、にぎわいを生みだしていきたい。福井新聞まちづくり企画班の目標は定まった。でも“きれい事”だけじゃ、まちづくりは進まない。

 前提となるのが、まちの活性化に理解ある空き店舗オーナーの協力。思いを共有できる開業希望者を探さなければならない。資金も必要だ。ともかく、地元商店街の力添えがなければ、立ちゆかなくなるのは目に見えていた。

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 「自分たちのまちなんだから、自分たちでリスクを取って仕掛けていかないと」。今年6月、福井駅前五商店街連合活性化協議会長の加藤幹夫さん(65)から、胸の内を明かされた。民間出資で新たなまちづくり会社をつくるという構想だ。

 「このままじゃ、中心市街地のにぎわいはどんどんなくなっていく。何とかしないと、福井市全体のためにもならない」。危機感を募らせた加藤さんは全国各地の視察を重ねていた。もがくようにしてたどり着いたのが、企画班と同じリノベーションのまちづくりだった。

 行政に頼らずに民間主導の手法で、まずやれることから動きだそう。でも商店街の一組織として動くのでは、意思決定に時間がかかりすぎてスピード感に欠ける。だから、有志で会社組織をつくろうという考えだ。

 「やる気のある人だけ、出資してくれればいい。誰もいないなら、俺ひとりでも出資する」。温和な口調も物腰も、いつも通り。だが、覚悟を決めた言葉は力強かった。

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 自分たちも新会社の設立・運営に参画して、地元に寄り添いながらまちの魅力づくりに役立ちたい。当事者と同じ立場で加わるには、出資も不可欠です―。上司に理解を求めた。そのまた上司にも説明を重ね、会社の了承を得た。

 出資者は、社長を務める加藤さんのほか、企画制作会社代表の阿部俊二さん(56)、飲食店経営の田邊豊さん(42)と福井新聞社。個人出資の3人とともに、企画班を代表して細川が業務に当たる。株式会社「福井木守り舎(きまもりしゃ)」はきょう13日、船出する。

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 まちづくり会社の取締役。記者として一住民として、まちづくり活動を志し約10カ月。思ってもみなかった肩書を授かった。

 なぜ「会社」なのか。

 企画班にとって、活動を一過性に終わらせないことは大きな課題だった。まちづくりを継続させるには、財政的に自立した組織が必要になる。となれば、NPOでもボランティア団体でもなく、会社組織になるだろう。出し合った資金をうまく回して経営を安定させれば、それがまちの活性化につながるはずだ。

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 「ホームランはいらない。ヒット4本で得点になるんだから、われわれはヒットを狙っていく」。福井木守り舎(きまもりしゃ)設立の打ち合わせを重ねていたある日、社長に就く加藤幹夫さんが宣言するかのように言い放った。

 異存はない。手掛けるのは、再開発事業みたいなハード整備じゃなくて、今ある建物を活用するリノベーション(新たな用途を前提にした建物改修)事業。一つ一つの動きは小さくても、積み重ねていけば、まちの姿を変えられる。いや、変えたい。「ヒット狙い」とは言い得て妙だ。

 資本金は500万円。空き物件の入居者側に求められる改修費用の一部に充てる。

 加藤「入居者の負担を極力減らして、若い人でも出店できるようにハードルを下げないと」

 細川「でも、改修内容によっては、足りないかもしれませんね」

 加藤「投資できる分だけで、事業の中身を考えればいいんや」

 開業後は、木守り舎が建物の直接の借り主としてオーナーに家賃を支払い、出店者から相応の賃料を受け取る。賃料で収益が生まれたら次の事業に回し、まちのために再投資する。

 加藤「取締役といっても当面は無報酬。まちがにぎわって、結果的に収支がとんとんになるなら、それでいいでしょ」

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 まず、企画班が検討している食の拠点づくりから着手する。

 事業の形態はほかにも、いろいろ考えられるだろう。一つの物件を複数の入居者で活用できれば、賃料を薄く広く集められる。店に限らず、例えば、複数のクリエイターが集まり共同で仕事ができる「シェアオフィス」にしたり、若者向けの住居にしてまちなかでの新しい生活様式を提案したり…。

 まち全体に付け加えたい要素と、建物や立地の特徴を組み合わせながら、こうした事業案を練っていく。そこが、木守り舎の知恵の絞りどころ。その上で、物件オーナーと入居者との仲を取り持つ。趣旨に賛同する出資者を今後も受け入れつつ、事業ごとに専門家や市民団体に協力を求めていくことになる。(細川善弘)

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