「期間限定」でいいんだろうか…。ゴールの形を見直し始めた=福井市中央1丁目の福井駅前電車通り

リノベーションの手法はきっと福井のまちにも当てはまる=福井市中央1丁目

 やっぱりだめだ、「期間限定」じゃ―。日増しに強まる思いに、もう耐えきれなくなっていた。高島記者も、土生記者も。

 初めの計画は今秋、福井市中心街に期間限定のレストランを開くことだった。山海の幸のほか伝統料理、工芸品を含め、福井県の豊かな食文化をアピールできる店をつくりたい。それは、まちと田舎をつなぐ装置になり、人、モノ、お金が循環する。

 まちづくりの一つのモデルになり得るという直感は、今でも間違ってはいないと思う。だが、期間限定の営業で伝えきれるか。数あるイベントの一つとしか、受け取ってもらえないのではないか。悩んで、悩んで、秋が来た。

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 「駅前はじり貧。別に経営が立ちゆかなくなったわけじゃないけど、あの人通りじゃ未来が見えないでしょ」

 JR福井駅近くの商店街で10年余り営業し、郊外のショッピングセンターに最近移転した店主は、拍子抜けするほど、さばさばしていた。「高級志向のうちの客層に合っている」とこだわってきた立地には、もう未練はないようだ。“一等地”にまた一つ、空き店舗が増えた。

 福井市中央1丁目にあるビル1階の物件は、近年ずっと2割近くが空いている。空き店舗が多いから人通りはまばらで、なおさら入居者が集まらない悪循環。「出店するならやっぱり、郊外だよ」。ある飲食店主からカウンター越しに聞かされたぼやきが、悲しい。

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 福井県の人口が減っていくのは避けられない。昔のような高度経済成長など望むべくもない。県や市町の税収が増える当てもなく、道路や水道といった生活インフラをこのまま維持していくのさえ、おそらく困難になる。となれば、まちはコンパクトにまとまった方がいい。郊外の多様な自然環境を残しつつ―。

 そんな方向に時代は流れているはずなのに、現状は大きくかけ離れている。

 例えば、福井市内の小売店の売り場面積。市のまとめでは、ここ20年で3割以上増えたが、中心市街地の売り場面積は逆に7割近くも減っていて、販売額は半減した。市街地の空洞化はなかなか止まりそうにない。

 そこを何とかしたい。民間の力で、できるところから。

 一つのまちづくり手法が念頭にあった。でも、それを実行に移すには、山口デスクや上司を説得する必要があった。

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 仮に、テナントの洋服店が抜けた空き店舗があるとしよう。壊すにも建て替えるにもお金がかかるから、放置状態になっている。どうするか。

 解消策の一つに「リノベーション」という手法がある。

 まず、立地や建物を生かせるような使い道をみんなで考える。建物のオーナーはもちろん商店街の人たち、建築などの関係業者、まちづくりにかかわる有志といったグループだ。その結果、飲食店が最適となれば、入居希望者の意向とすり合わせながら改修する。

 その過程で必要な投資額や家賃が決まるので、オーナーにも入居者にもあらかじめリスクの度合いが見えやすい。まちなかに入居者や客を新たに呼び込めれば、まち全体のためにもなる。

 念頭にあったのは、この手法だ。6月に静岡県熱海市で開かれた実践講座に参加し、地方都市に合っていることを実感していた。中心市街地だからといって、なにも高層ビルを建てる必要はない。むしろ、これまでのような再開発の手法はリスクが大きすぎる。

 講師は「一つの成功例で、まちは変わる」と力説していた。それは福井にも当てはまるんじゃないか。「リノベーション」が頭から離れなくなった。

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 そもそもレストラン計画を「期間限定」にと決めたのは、記者だけで店を運営できるはずもなく、自力で集められる開業資金にも限界があるから。そこで既存の店を一定期間だけ借りるという“現実的”な選択をしたわけだ。それが計画の意義を見えにくくし、悩みの種となってきた。

 「『(まちづくりの)はじめ方』は簡単ですが、『おわり方』は難しいですので」。連載のタイトルに絡めて、あるNPO法人の代表からいただいた指摘が、今さらながら胸に刺さった。方針転換を決断するときだった。

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 期間限定じゃなく、リノベーションによって常設の店を目指したい。

 上司に告げると案の定、たしなめられた。「あまり自分たちの力を過信しない方がいいよ」

 飲食業界は競争が激しく、浮き沈みも大きい。期間限定の店だって実現するのは難しい。それなのに目標のハードルをもっと上げるなんて―。上司の言いたいことは分かる。

 まちづくりの初心者には分不相応の目標かもしれないし、不安もある。でも、まちづくりを実践するからには、よりリアルな成果を追い求めるべきなんじゃないですか。

 食い下がると、上司は「もう少し、実現性を探ってからやな」。それならば、リノベーションの具体的な計画を立ててみます。次の一歩を、とにかく踏み出してみなくては何も始まらない。(細川善弘)

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