ふくい食材探訪mapとふくいの伝統野菜

収穫を控えたサツマイモ「とみつ金時」の畑で語らうエコフィールドとみつのメンバー=福井県あわら市北潟

昇竜まいたけを使った弁当や総菜を直売所に出荷している大野市和泉地区の皆さん=福井県大野市朝日

新ブランド「黄金の梅」の生産に取り組むJA越前たけふ河野梅生産組合=福井県南越前町今泉

久々子湖産のシジミを中心に地場食材をふんだんに使ったランチを提供する「ラ・しじみ」のメンバー=福井県美浜町久々子

山内かぶらの種を手にする「山内かぶらちゃんの会」のメンバー=福井県若狭町山内の山内集落センター

 福井は質の高い多種多様な食材がそろう。そんな“宝”を発信しようと汗を流す住民たちがいる。わずかに残った種を大事に育て、集落のシンボルとして伝統野菜を作る女性グループ、一大生産地を支える若い力…。食の担い手たちが、地域に活力を与えている。 
(1)とみつ金時(あわら・富津) 育った農村守りたい

 県内に流通するサツマイモの8、9割は、あわら市北潟富津(とみつ)集落の畑で育った「とみつ金時」だ。年間出荷量約600トンの7割強を、5人の若手農家でつくる「エコフィールドとみつ」が支える。

 結成は2010年。高齢化で地域の農家が減る中、農家3代目の吉村智和さん(37)が、安定的な出荷に欠かせない大型貯蔵施設の建て替えを発案。「先人が切り開いた産地を守りたい」という吉村さんの熱意にほだされ、一度はサラリーマンになった農家の息子4人が人生をかけて共同出資を決意した。

 貯蔵施設で温湿度を徹底管理し、うま味を閉じ込めた「とみつ金時」は県外での評価も高まっている。小さな農村を「日本一のサツマイモ産地」にすることが5人の夢だ。

(2)昇竜まいたけ(大野・和泉) 唯一無二の弁当好評

 大野市和泉地区の特産「昇竜まいたけ」をたっぷり使った炊き込みご飯のお弁当。道の駅九頭竜(同市朝日)の直売所に、地域の農家や鮮魚店主ら11人がそれぞれ自慢の品を並べている。同じマイタケの弁当でも味は微妙に異なり、お気に入りを求めるリピーターが増えている。

 90~100食が売り切れる日があり、行楽シーズンには天ぷらなどの総菜を含めて1500食の記録も。

 昇竜まいたけは昭和60年代から特産化が進み、現在の生産量は年間95トン前後。喫茶店のマスター木下宏一さん(55)は「昇竜まいたけは歯ごたえが最高。これからも11人で切磋琢磨(せっさたくま)し、おいしいお弁当を提供していきたい」と笑顔で話す。

(3)黄金の梅(南越前・河野) 樹上完熟 香り際立つ

 ほんのり赤みがかった柔らかな黄色、香りは桃のように甘い。南越前町河野地区の梅生産組合が3年前から出荷している新ブランド「黄金の梅」。福井梅の品種「新平太夫」を樹上完熟させ、ぽとりと落ちてきたところを木の下のネットで受け止める。

 収穫期は7月上旬の2週間足らずで、生産農家も十数軒と少ない。限られた収量だが、インターネットを中心に人気が広がり、今年は昨年比1・5倍の約6トンを出荷した。

 ジャムやお菓子にすると香りや甘さは一層引き立つ。梅干しを食べなくなった若い世代にもアピールできる産地期待の逸品。完熟梅は傷みが早いなどの課題もあるが、生産組合は「ブランド品を目指す以上、克服していきたい」と活気づいている。

(4)シジミ(美浜・久々子) 湖の恵み 肉厚で濃厚

 肉厚で濃厚な久々子湖産シジミをブランド化しよう-。「ラ・しじみ」(美浜町久々子)のメンバー、森川良子さん(62)の思いは熱い。
 2007年、葉っぱを中心に地域ビジネスを展開する「いろどり」(徳島県上勝町)での研修で、高齢者が元気に農作業に取り組む姿に感動。美浜の産物で地域を元気にしようと、元美浜町職員の田辺義郎代表(65)とグループを立ち上げた。

 活動拠点施設として同湖畔にコミュニティーカフェを設け、地元食材を使ったランチを提供。シジミ漁体験やクラフト教室も行っている。ただ肝心のシジミの漁獲量が年々減少しており、地魚や旬の野菜を取り入れた料理にも工夫を凝らす。「美浜の食を発信できれば」と願いながら。

(5)山内かぶら(若狭町・山内) 新たな伝統 この手で

 若狭町山内の伝統野菜「山内かぶら」。丸みを帯びた形でひげ根が多く、野性的な外見だが、煮崩れしにくく風味は抜群。生で食べるとフルーツのような味わい。約半世紀も作り手が途絶えていたが、町の呼び掛けもあって2010年、生産が復活した。

 栽培が中断していた間も義母が採種を続けてきたという飛永悦子さん(72)を中心に、集落の女性によって生産団体「山内かぶらちゃんの会」が結成された。平均年齢75歳の元気な6人が、記憶の中にある栽培法をもとに年々収量を伸ばしてきた。

 山内かぶらは町内の学校給食に使われ、福井市のレストランや京都府の料亭にも出荷されている。「うちらのカブラは最高」と誇りを持ちつつ、新たな伝統を築いていく。

【企画班ノート】 どんどん自慢しよっさ

 地域の食の担い手が「この魚おいしいざ」「うちの野菜が一番や」と誇らしげに話す姿に、何とも爽快な気分になった。奥ゆかしくPR下手とつねづね呼ばれる福井県民。どんどん自慢していきましょう。誇りを持っている地域には“元気力エネルギー”があふれているのだから。

 山内かぶらちゃんの会を取材した際、会員さんが手作りのかしわもちを出してくれた。カシワの葉は丁寧に蒸され、あんこは甘さ控えめ。食べ飽きない。これ、販売したら? との町職員の呼び掛けに「こんなんでお金取るの?」。それがいいんですよ。

 「私たちが楽しんでやればみんなの心に響く、福井で楽しい食の流れをつくっていける」。取材で親しくなった料理家さんの言葉。うん、それがきっと、まちを元気にするコツなんですよね。(土生)

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