講師陣や物件オーナーらに向けた受講者の公開プレゼン。会場の熱気に包まれた=22日、静岡県熱海市銀座町の丸屋ビル

 「たった一枚の干物を焼くだけで、熱海が変わるんです」

 静岡県熱海市でのリノベーションスクール最終日。3日間の集大成となるプロジェクトの公開プレゼンテーションで、講師陣や住民ら約120人から拍手と歓声が一斉に沸き起こった。「人生が変わりそうなくらい強烈な3日間だった」と興奮に浸る受講者。空きビル会場は熱気に包まれ、まちが変わろうとするエネルギーが伝わってきた。

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 紆余(うよ)曲折の末に決まった佐藤油店のプロジェクト名は「朝ビル」。もともとある1階のカフェを早朝から開き、朝食に熱海名物の魚の干物を焼いて食べてもらう。2階はヨガや手工芸を学ぶ教室スペースに改修、観光客や住民が朝の時間を共有できる交流の場にする。朝食売り上げや教室利用料によって、オーナー負担の改修費1千万円を3年弱で回収できる見込みだ。

 このほか、海の近くにある割り箸卸業の事務所兼住宅は、陶芸家3人で工房とギャラリーを共用するシェアハウスにする計画。市所有の集合住宅は2部屋分をセットにして、若いカップルの賃貸住宅と短期滞在者の宿泊拠点に活用するプランが示された。

 どの提案も前日までとは見違えるような説得力がある。講師たちも「小さく始めて大きく育っていきそう」「全国に発信できるモデルになり得る」と太鼓判。夜通しプランを練った新潟県燕市のまちづくり会社代表小山雅由さん(34)は「ノウハウを持ち帰り、自分たちのまちに生かしたい」と目を輝かせた。

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 欠かせなかったのは、投資をしてでも不動産を地域のために生かしてもらおうというオーナーの存在だ。「皆さんの思いに乗っかってよかった」。受講者の懸命さに感極まり、涙を流すオーナーもいた。佐藤油店のオーナーは「夢のある楽しい企画をいただいた。まちをドラスチックに変えてくれそう」。

 まちに貢献したい物件オーナーと、まちで活動したい人のニーズをつなぎ、“ウィンウィン”の関係をつくるリノベーション事業。福井でもこんな動きが芽生えれば、と想像が膨らむ。

 スクールの監修役を務めた建築・都市・地域再生プロデューサー清水義次氏に尋ねると、「まずは、志のあるオーナーを1人見つけること。そこから積み重ねていけば、まちは必ず良くなっていくから」と力強い後押しの言葉。貴重なお土産になった。(細川善弘)

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