プロジェクトづくりでアイデアをぶつけ合うリノベーションスクールの受講者。妥協は許されない=6月21日、静岡県熱海市銀座町の佐藤油店

 「物件は単なる舞台にすぎない。どんな人がどんな思いで集まる場にするのか。物語を作ろう」。静岡県熱海市で開かれたリノベーションスクール。講師の一人、建築家の大島芳彦氏が呼び掛けると、受講者が頭をひねり始めた。

 30人は3チームに分かれ、物件が一つずつ割り当てられた。そのうち、熱海銀座商店街にある椿(つばき)油販売の佐藤油店は、建築面積約100坪の4階建てビル。1階には売り場をはじめ油を搾る工房、カフェがある。2階は空きスペースで、3、4階にオーナー一家が住んでいる。

 改修で建物の用途を変え、周辺一帯に変化を起こすプロジェクトの立て方とは。この物件を例に手順を追っていこう。

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 初日はまず、周辺の特徴を踏まえてから、物件・立地の強みと弱みの洗い出し。受講者が挙げたのは「厨房(ちゅうぼう)がある」「通行量が少ない」など。簡潔な単語を並べると、イメージを膨らませやすい。

 次は物件を定義するコピーを考える。裏付けは後回しでいいから、できる限りとっぴな表現を心掛けるのがこつ。「宿泊客のたまり場」「クリエイターが住む村」。面白いキーワードが出てきた。

 これと同時に、建物の具体的な使い方を探る。ターゲットの性別や年齢層、生活様式は? 「名物のアジの干物を観光客が焼いて味わう場所に」。アイデアの芽がホワイトボードに並んでいく。

 2日目は収支計画。物件オーナーまたは物件を借りる事業主体が投資し、テナントに賃貸する枠組みをつくる。リスクを減らすには「入居者を先に決めて、払える家賃を把握する。その家賃で回収できる分だけを投資すべきだ」(北九州家守舎(やもりしゃ)社長の嶋田洋平氏)。“もうかる仕組み”が肝心だ。

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 一日の終わりには、経過を発表するプレゼンテーションが待っている。各グループ内で、物件周辺での聞き取りやデータ集め、収支計算などの役割を分担。フェイスブックで情報を共有しながら発表資料をまとめる。

 「エリアの課題に応えようとしていないのが腹立たしい」「ストーリーが見えず、全然わくわくしない」「きれいなコンセプトだけじゃ駄目。そろばん(収支)が入らないと」。プレゼンが終わると、講師陣から次々と容赦ない駄目出し。妥協は許されない。

 受講者の一人がつぶやいた。「きょうは徹夜だな…」。プロジェクトをオーナーに提案する最終日に向けて、長い夜が始まった。(細川善弘)

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