リノベーションの対象になった佐藤油店の売り場を調査する受講者。3日間で実現可能な計画を練る=20日、静岡県熱海市銀座町の同店

 かつて国内随一の観光地だった静岡県熱海市にある熱海銀座商店街。目抜き通りだったはずの一帯も、今は人がまばらだ。椿(つばき)油の化粧品などを販売する佐藤油店は、そこに建っていた。

 全国から集まった若者たちが、築55年の4階建てビル内を興味深げに調べ始める。「一つの空間が広すぎて区切りづらいね」「奥にある工房をうまく使えないかな」

 この物件の使い方をどう変えれば周辺一帯の再生につながるのか。事業の収支をどう見込み、改修にはいくら投資するのか。実現可能なプロジェクトを練り上げるまでに、与えられた時間はたったの3日間。そんなことが本当にできるのか―。

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 6月20~22日に熱海市で開かれた「リノベーションスクール」を見学した。「福井でも、これをやるべきだよ」。福井市のNPO法人代表から熱く告げられ、その存在を知った。

 スクールは、建築家らの研究会によるシンポジウムがきっかけで各地に広まり、自治体などが講師陣を招いて開催。新たな活用のために建物を改修するリノベーションを通じたまちづくりのノウハウが学べる。教材は、その地域に実在する物件。最終日のプレゼンテーションで物件オーナーが同意すれば、実際の事業として動きだすというリアルさが最大の特徴だ。

 学びの場でありながら、実践の場でもある。だから開催自体が、まちづくりのエンジンになる。

 発祥の地の北九州市では、2011年から計6回のスクールが開かれた。飲食店が撤退した空きフロアは、若手クリエイターの共同オフィスに。築60年の木造空き家は、文化交流の貸しスペースになった。事業化に結び付いた物件は10件以上。商店街は人通りが増え、新たな雇用も生まれている。

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 今回の受講者は20~30代の建築士や不動産業、デザイナー、学生ら計30人。約80人の応募者から選考された精鋭ぞろいだ。待ち受ける講師陣は、リノベーション業界で第一人者の建築士ら。ビルの空きフロアを会場に、いよいよ最初の講義が始まった。

 「投資リスクを最小限に抑え、小さく経済が成り立つようにした上で、まちにインパクトを与える。新しい未来の姿を描くプロジェクトを生み出そう」。北九州市で事業を展開するまちづくり会社「北九州家守舎(やもりしゃ)」社長で建築士の嶋田洋平氏は、こう投げ掛けた。

 人口減少と経済衰退による空き物件の増加は、全国の地方都市共通の課題。このスクールで福井のまちに生かせるヒントが見つかるかもしれない。(細川善弘)

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