ろくろを使って木地を仕上げていく職人の酒井さん(手前)。ワークショップの参加者が真剣に見つめていた=15日、福井県鯖江市西袋町

 越前漆器の塗師(ぬし)、中野知昭さん(38)は無口でぶっきらぼう。ちり一つも嫌う仕上げの「上塗り」は、ただでさえ気を張る。そのうえ、人に教えるのは、ずいぶん骨の折れる仕事だったに違いない。

 中野さんは数日前から、参加者16人分の器の「下地」「中塗り」という中間工程を、ひとり黙々と済ませてくれていた。そして迎えた15日のワークショップだった。

 「職人さんの仕事に触れ、“本物”を生活に取り入れて大切にしたいと思った」。参加した女性の感想だ。一人一人と根気強く向き合った中野さんや、産地の皆さんにぜひ聞かせたい。

 ■■■

 まちづくり企画班による「ふくいフードキャラバン」の第2弾を、福井県鯖江市河和田地区で開くのは必然だった。

 福井県内各地を巡るキャラバンは元はといえば、県外から移住した若手のものづくりグループ「TSUGI(ツギ)」の新山直広さん(28)のアイデア。「河和田は都会がうらやむような『すてきな田舎』として発信できる」。彼らの思いを一緒に実現したかった。

 ものづくりが息づく「越前漆器の里」を多くの人に感じてほしい。だから日程は余裕をもって2日間に。初日の15日は、木目を生かした「目弾(めはじき)仕上げ」の漆器と木製スプーンの制作。最終日の21日に参加者自身が作った器で食事をするという構成だ。

 TSUGIの思いに産地の職人が二つ返事で応えた。中野さんのほか、木地師の酒井義夫さん(34)はおわん作りを、木工職人の山口大樹さん(27)はスプーン作りの先生役を引き受けた。

 ワークショップを終え、酒井さんが言った。「河和田に同じ思いの人間がこれだけいるから、できるイベントですね」。その輪に自分もいることがうれしかった。

 ■■■

 「こんな古い重箱でよかったら家にたくさんあるわよ」

 地元の女性グループ「河和田いきいき協議会」代表の杉本穎子(えいこ)さん(75)らが、黒や朱の年代物をいくつも貸してくれた。

 これらに盛るのは山ウニ、桑の葉茶、豊かな山菜料理…。いきいき協議会の皆さんが腕によりをかける。食事を楽しむ空間はTSUGIのデザイン。想像すれば、どうです、これ! と早くも自慢したくなるぜいたくさ。

 河和田キャラバンは、いよいよあす。大団円を迎えられるかどうか。ちょっと緊張してきた。(高島健)

関連記事