港の岸壁にしつらえたテーブルに越廼自慢の食材が並んだ=6月5日、福井市茱崎町の茱崎漁港(菊野昭彦撮影)

 漁港の岸壁に、真っ赤な越前和紙製のクロスを敷いたテーブルを並べた。飾り付けた季節の花々や緑のローズマリーの香りが、ふんわりと漂う。すぐそばのフェンスには無造作に掛けられた漁師の麦わら帽子やかっぱ。停泊している漁船は波に揺れている。

 6月5日午後、福井市越廼地区で企画班が初めて手掛けたイベント「ふくいフードキャラバン」が始まった。あいにくの雨で、水揚げを見てもらう予定だった定置網船は欠航し、イベントの最後を飾るはずの夕日も望めそうにない。

 ただ、苦肉の策で食事会場を海辺の緑地から屋根がある港のそばに変更したことが、“いい味”になった。

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 「キャベツウニ、かわいいー」。参加者の女性が養殖施設で、餌の海藻代わりにキャベツを与えられているウニを見て、歓声。

 「越廼でイカ刺しの薬味といったら昔から大根おろし」。越廼漁協加工部「ぬかちゃんグループ」の“浜のおばちゃん”たちが教える地元ならではの食べ方。

 極め付きは大型のバーベキューコンロで豪快に調理した、越廼特産のイカがたっぷり入ったパエリア。参加者一同「おいしい~」。

 「磯の香りや港を出る船の音を感じながら食事を楽しめるなんて。とてもぜいたくな体験」と参加した鯖江市の朝井啓子さん(42)。福井ほどすてきに食を楽しめる場所はない―。イベントで表現したかったことが確かに伝わった。

 何より、越廼漁協参事の林茂さん(58)の「地元の何げない場所が、ちょっとした工夫でお客さんに喜んでもらえる場所になる。今後の“浜”の活性化をどうしていくべきか、一つのヒントになった」との言葉がうれしかった。

 小さいけれど、まちづくりの種を越廼に落とすことができた気がした。

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 イベントから10日後、1本の動画が完成した。雨音のようなピアノに乗って映し出される越廼の海、港、食、そして笑顔…。

 イベントの様子はノルウェーの本家「フードスタジオ」にならい、動画にまとめた。「すてきな福井」を一日限りのイベントで終わらせず、インターネットで発信していくことは、県内外へのアピールになるはず。協力してくれた地域の人たちの自信にもつながるだろう。

 動画はきょうから、本紙のホームページと企画班のフェイスブックで公開しています。(高島健)

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