フラットキッチンのカウンターに座ると、店づくりに携わった多くの人の愛着が伝わってくる=12日、福井市順化2丁目

 古いビルの内装を壊し、新たに土壁を塗り、廃材を床に張ってカフェに再生する―。これらの作業を学びたい人を募り、ワークショップ形式を取り入れて開店した福井市順化2丁目の「フラットキッチン」。ドアを開けると、木製の窓枠やモザイクタイルが施されたカウンター。このおしゃれで温かい空間に、レストラン開業のヒントがきっと隠されているはずだ。

 創設者の1人の藤田茂治さん(42)=同市=によると、ビルの改修にかかった費用は約550万円。業者に本格的な改修を頼むと約1千万円というから、相当の節約になっている。壁や床に“素人らしさ”も残るが、そこが逆に店の味になっている。

 ただ、藤田さんからは「コストカットが一番の目的ではない」と諭された。「参加した人がプロジェクトに加わったという満足感を得て、愛着を感じる空間にしたかった。何かが始まるという期待感が多くの人を集めたのだと思う」。自分たちも、わくわくするプロジェクトに育てていかないといけない。経費節減以上の難題に直面した気がした。

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 手作りの小さな屋台を並べてまちを元気にするプラン「chobit(ちょびっと)」を考え、開業した鯖江市の横井理恵さん(28)。“先輩店主”のデビューを見に行くと、笑顔のお客さんに囲まれて商売を楽しんでいた。

 最初は、福井市の空き物件で店を持とうとしたそうだが、「最低300万円が必要。毎月の家賃もあるし無理だった」。屋台なら初期投資は80万円程度で、家賃もタダ。場所も時間も選べて、ほかの仕事を持ちながらでも、できる範囲で好きな商売を始められる。開業のハードルを下げる仕組みだ。

 でも、実現までには相当な試行錯誤があったのでは? 「正直言うと、始めるまではお金の計算で毎日胃がキリキリでした」。人知れぬ苦労を互いに分かち合った。

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 自分たちのレストラン計画も、そろそろ収支を詰めていかなければ。現段階の見込みでは、事業規模はざっと400万円弱。思っていたより膨らんだ。やはりネックは準備段階の資金調達。企画班が自己資金を投入するとしても、先行きは何とも心もとない。

 悩んでいると山口デスクが「オッケーもらったぞ」とにっこり。借用書に署名、押印して福井新聞社へ提出。企画班名義でつくった預金口座に、264万円が振り込まれた。開業前に必要となりそうな経費として求めた額だ。

 期せずして始まった“借金生活”。返済するすべは、プロジェクトの成功しかない。ますます、引くに引けなくなった。

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