おどけていても波多野さんのハートは熱い。「まちづくりは大それたことじゃない」=福井県越前市中央2丁目のリスボンエイト

 「記者がまちづくりに挑戦します。失敗も成功も隠さずに記事にしていけば、読者にまちづくりを身近に感じてもらえるかもしれません」

 自分たちのレストラン計画を告げた。おしゃれな眼鏡をかけた青年は一瞬、驚いたが、すぐに「それ、面白いっすね」。

 オムライスにトンカツを載せた福井県越前市のB級グルメ「ボルガライス」で、まちを盛り上げている日本ボルガラー協会の波多野翼会長(29)。本職の越前市職員を離れた立場で活動し、4年足らずでボルガライスの知名度を全国級に押し上げた。

 「刺激になるかもよ」という山口デスクの勧めで訪ねた。すごいことをしているわりに、第一印象は飾らない自然体の人だった。

 話もそこそこ、年季の入ったまちの食堂で一緒にボルガライスをほおばった。ガツン、とくる味。

 「県外からお客さんが増えたのよー」と喜ぶ食堂のおばちゃん。笑顔でうなずきながら波多野さんは「頑張ってまちづくりをします、ではなく、生活の中に自然とまちづくりがあるイメージ」と教えてくれた。まるで休日にゴルフや釣りにでも行くみたいに、と。

 正直に言うと、地元の祭りや体育祭に携わるのが、おっくうに感じることがある。「忙しいのはみんな同じ」と思い直し、動く。まちづくりへのそんな関わり方が普通だと思っていた。違った。

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 波多野さんは2009年秋、市職員として市内の業界団体と、あるまちづくりの企画を進めていた。会議では「市は何をやってくれるのか」「補助金はどれだけ出せるのか」といった意見ばかり。結局、企画は立ち消えになった。

 「まちづくりは大それたことじゃない。補助金に頼らなくてもできるのに…」。だったら、自分たちがそのモデルになろうと、翌年の春に仲間数人と協会を立ち上げたのだ。

 これって、自分たちの計画とすごく思いが共通してないか。

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 波多野さんたちは周りの人を巻き込むのが、すごく上手だ。

 越前市出身の著名漫画家にボルガライスのポスター制作を頼み込んだら、面白がった多くの人が協賛金を出してくれた。お礼にと完成品を配ったら、まちの商店、寺院、民家の軒先にまで張り出されてマスコミの注目を浴びた。まちの食堂にお客が増え始めたら、大手コンビニが次々とボルガ弁当を販売した。

 「自分たちが楽しそうに活動してたら、自然と輪が広がった。まちづくりは楽しむこと」。9歳年下の青年の言葉に勇気をもらった。

 まずは自分たちがわくわくすることを考える、それこそがまちづくりの求心力になるはずだ。(高島健)=プロローグおわり

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 企画班4人だけでは、まちづくりを実践できない。4月にお届けする第1章では、記者が仲間探しに奔走します。

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