伝承料理は最高のごちそう。おばちゃんたちの知恵が詰まっている=福井県小浜市川崎3丁目の「濱の四季」

 何だろう。普段スーパーで買うネギと全然違う。さっとゆがいただけなのに、甘くて食べやすい。

 小浜市直営レストラン「濱の四季」で、伝統野菜の谷田部ネギが持つ力を知った。ネギ特有の辛みがない上、根元の部分も柔らかい。

 谷田部ネギをからしと酢みそであえた、伝承料理の「ぬた」がお膳の真ん中で存在感を示していた。特別な調味料は使っていないが、素材の持ち味を最大限に引き出している。

 「この味はたとえ東京でも食べられない」。京都や三重から来た夫婦連れは満足そうだ。地元の食材を昔ながらの調理法で頂く。何でもないことのように思えるけれど、実はそれこそが、最高のごちそうなのか。

 ■■■

 東京の見本市に並んだあわら市のサツマイモ「とみつ金時」。バニラの粒を添えたグラタンの試食皿を手に取り、一口ほおばってみた。しっとりした舌触り。濃厚な甘み。まるでスイーツそのものだ。

 “野菜の魔術師”と呼ばれる神保佳永シェフ(36)が調理を実演した。都内人気店の料理長は「首都圏で有名な加賀野菜の五郎島金時と比べても、甘みは負けてませんよ」と太鼓判を押した。全国から訪れた外食オーナーらが興味を示すのを見て、とみつ金時が誇らしかった。

 「福井には良い野菜があるんだから、日本中にアピールすべき」。シェフが言うように、県民として福井の食材にもっと自信を持っていいんじゃないだろうか。

 ■■■

 若者たちでにぎわう居酒屋全国チェーン店。福井市で何軒か回ってみたが、お造りも、サラダも、メニューの食材はすべて県外産だった。大量入荷でコストを抑えたい大手の外食産業の論理、園芸農家がまだまだ少ない福井の農業事情、消費者側の無関心…。流通の仕組みを含めて答えは簡単には見つかりそうにない。ただ、魅力十分の福井の食材が使われていないことがすごく悔しかった。

 地場産を意識した食生活を送ってきたか、と問われれば口ごもってしまう。逆に言えば意識しなければ、地元ならではの食に出合えないということ。自分たち住民が地元の食を身近に感じ、誇りに思えるように、レストランづくりのアイデアを形にしよう。

 「自然、食、人のつながり―。福井には他県にない、いいところがたくさんある。残念なのは県民がその魅力に気が付いてないこと」。大阪から福井に嫁いできた女性が、この連載のフェイスブックページに早速、ひと言を寄せてくれた。

 そう、そうなんですよね。

関連記事