「なじみの味」を楽しむ村井さん(左端)ら3世代家族。宮崎さん(右)が温かく見守る=福井市中央1丁目のスパゲティ専門店「イタリア」

 初めてでも、どこか懐かしい味。自家製トマトソースのスパゲティは、しばらくたつとまた食べたくなる。店内はカウンターと丸いすだけなのに、なんでこんなに気分が落ち着くんだろう。

 JR福井駅近くのスパゲティ専門店「イタリア」。最近よく通い始めたのには訳がある。

 「俺たちのレストランづくりが、まちづくりにどう結び付くのか。もっとはっきりさせよう」。企画班の記者たちに山口デスクから号令がかかった。企画書はできた。言葉では説明できるけれど、確信がほしい。イタリアの、あの不思議な魅力にヒントが隠れているかもしれない。

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 「マスター、また来たよ」

 福井市の村井久子さん(73)が店主の宮崎又彦さん(71)に笑顔を向けた。40年以上前から通い続ける常連客の“草分け”だ。しかも本人だけじゃなく、嫁いだ娘も孫娘もこの老舗にやって来る。カウンターに3世代家族が並んだ。

 「物心ついたときから、なじみの味」。好物のエビフライスパゲティをほおばるのは久子さんの次女。孫の高校生も「この味、いつの間にか好きになってたね」。長女とその娘も加わり、5人で団らんのひととき。

 「お墓参り以外でみんながそろうなら、決まってイタリア」。久子さんは、この店で家族のつながりを確かめ合っているように見えた。「マスターがいなくなったら困る。4世代になるまで頑張ってよ」。宮崎さんがカウンター越しに優しくうなずく。温かい光景に思わずじんときた。

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 郊外の大型商業施設ができるにつれ、中心市街地のにぎわいは失われていった。空き店舗を目がけ、全国チェーンの飲食店も入ってきた。それでも「人生が交わる場所を駅前に残しておきたい」。それが宮崎さんの思いだ。

 「よそにはない味」を求めて改良を重ねた自家製ソースは、確かに世代を超えて人を引きつけている。県外から戻ると必ず立ち寄る会社員、かつて苦楽を共にした商売仲間…。イタリアを“味の古里”と慕う人たちが日替わりで顔を出す。

 スパゲティでつながる人と人。イタリアの本当の魅力は、これだろう。

 「食」には人を結び付ける力が秘められている。それは店主とお客だけでなく、食材の生産者と料理人との関係だって同じじゃないか。

 レストランづくりの柱の一つは、賛同する食の担い手たちをつなぐこと。地域の食と一緒に、人のつながりを感じてもらえる場にできれば、福井の良さをあらためて見直すきっかけになる。

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