道傳研司・福井県立病院外科主任医長

 夫が一昨年、直腸がんの手術(腸管切除術)を受けました。人工肛門をつくる一歩手前でしたが、手術後は排便時の痛みがひどいようです。会社で何回トイレに行ったかなどが毎日の会話になり、多いと10回ぐらいのときもあります。このまま一生痛みがひどいのでしょうか? 日ごろの生活の注意点を教えてください。(勝山市、女性)

 【お答えします】道傳研司・福井県立病院外科主任医長

 手術部位に異常がないか確認を

 「人工肛門をつくる一歩手前でした」とのことで、かなり肛門に近い位置で直腸を切除したことがうかがえます。直腸がん手術の向上は目覚ましいものがあります。

 例えば、▽肛門近くの進行した大きな直腸がんでも、手術前の放射線治療や抗がん剤でがんがとても小さくなった場合▽内肛門括約筋の一部に及んでいると思われる直腸がんでも、内肛門括約筋を切除することでがんをきれいに切除できると判断された場合-などは、永久的な人工肛門を回避できる可能性があります。

 しかし、放射線治療や肛門ぎりぎりの手術は、排便に関係する筋肉の働きに異常を生じやすくします。また、直腸をほとんど切除する手術は、便をためておく機能を低下させ、頻繁な排便の原因につながります。頻繁な排便は、痔(じ)の発症や悪化、肛門周囲のびらんや炎症などの原因となります。

 「排便時の痛みがひどい」という症状に対しては、まず直腸がんがあった周辺や腸管をつなぎあわせた部位に異常がないかを検査で確認しましょう。さらに、肛門科の医師の診察を受けることも大切です。どこにも異常が見当たらない場合、排便に関わる筋肉の働きに異常が生じている可能性もあります。

 お酒や刺激物の摂取避けて

 ご相談の場合、手術後ある程度の年月が経過しており、症状の劇的な改善は難しいかもしれません。原因を特定できない直腸下部から肛門にかけての難治性の痛みに対しては、薬物による神経ブロックが試みられる場合もあります。ただ、効果は不確実で、直腸切除後の排便時の痛みに対しては一般的な対処法ではありません。

 排便時のつらい症状が続き、生活に大きな支障を来しているようであれば、人工肛門をつくらざるを得ないこともあります。しかし、薬物による排便コントロールや抗不安薬、抗うつ薬の使用などにより症状が軽減する場合もあります。

 日常生活では、少しでも楽と感じるような便通の維持を心がけ、腸管や肛門に負担がかかるアルコールや刺激物の摂取を避けることが大切です。また、肛門の洗浄やきれいにふくことは大切ですが、過度になるとかえって肛門を傷めてしまうので注意が必要です。

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