昨年夏、頭の中で「ビシー」という音がして、違和感があったのでMRI検査を受けました。軽い脳梗塞の小さな痕があるが特に問題はない、と言われました。その後、くしゃみやせきをしたり、物を持ち上げると頭が痛みます。力んで排便したときも痛みます。我慢できないほどではありませんが、1年近く続いています。脳梗塞の後遺症でしょうか。(福井市、68歳男性)

【お答えします】 町谷知彦 福井県立病院神経内科医長

! 後遺症でなく良性の労作性頭痛か

 脳梗塞とは、脳に酸素や栄養を送る血管が何らかの理由で詰まり、血液の流れが遮断されて発症する病気です。片側の手足のまひや、ろれつ障害といった症状が突然現れるのが特徴ですが、そのような重大な症状を示さずに脳の検査で初めて分かる無症候性の脳梗塞もよく見つかります。

 今回のご相談は頭痛が生じる状況が特徴的で、くしゃみや排便時のいきみ、重いものを持つなどは、いずれもおなかに強く力を入れた状況といえます。

 このような背景で生じる頭痛は労作性頭痛といいます。脳腫瘍や硬膜下血腫(脳の表面に血液がたまる病気)などが原因となって頭痛が生じる場合もありますが、多くの場合は特別な治療を必要としない良性の頭痛です。

 脳梗塞は同じ脳の病気であるくも膜下出血、脳出血や脳腫瘍と比べ、頭痛を生じることが少ない病気です。労作性頭痛の原因となることもほとんどなく、現状では脳梗塞の後遺症を疑う必要はないと考えます。

 また、1年前の頭部MRI検査で異常がなく、その後頭痛だけが同じような強さ、性状で続いている経過から、脳腫瘍などの悪性の病気が背景に存在するとは考えにくく、良性の労作性頭痛と考えてよいと思われます。

 今後、頭痛の程度が強くなったり、1日中続くようになったり、吐き気やめまいなど頭痛以外の症状を伴うことがなければ、そのまま経過を見ていただいて問題ないと思います。そのような悪化傾向が明らかとなるか、あるいは脳梗塞も含めた脳の病気について気になるのであれば、かかりつけ医に相談した上で再度MRI検査を受けることを検討してください。

! 治療続け再発のリスク減らす

 今回のMRI検査で発見された「軽い脳梗塞のような痕」は、発症時期が不明で脳梗塞に伴う症状がなく、無症候性の脳梗塞であろうと思います。

 無症候性の脳梗塞は内服薬による再発予防治療の対象とはなりませんが、何回も再発を繰り返すうちに徐々に認知機能の低下やパーキンソン病に似た歩きにくさなどの症状を生じる場合があります。決して無視してよいわけではありません。

 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの動脈硬化を促進する病気や、喫煙など生活習慣が脳梗塞の再発の危険を高めるとされており、これらの治療、是正を行うことで再発のリスクを減じ、長期的に脳を良い状態に保つ事ができます。

 引き続きかかりつけ医と相談の上で、これらの治療を継続してください。

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