5月の連休明けから耳鳴りが治りません。仕事中などは気になりませんが、何もしていない時や寝る前に頭の内側から「キーン」と聞こえます。以前にも同じような症状がありましたが、すぐに治ったので気にせず過ごしていました。何が原因か教えてください。(鯖江市、62歳男性)

【お答えします】 嘉藤秀章 福井県立病院耳鼻咽喉科主任医長

! 耳鳴りは難聴に伴って生じる

 耳鳴りというのは、不思議な現象です。何しろ、実際にはありもしない音が、本人には聞こえるのですから。
 さて、原因ですが、耳鳴りは難聴に伴って生じると考えられています。耳鳴りがある人は、本人がよく聞こえていると思っていても、聴力検査をしてみると、聞こえにくい高さの音が見つかることが多くあります。
 もともと耳がよく聞こえた人も加齢とともに、最初は高い周波数の音から始まり、だんだんと低い周波数の音まで聞こえにくくなってきます。そうすると、最初はキーンという高い音の耳鳴りが聞こえ、次第に高い音と低い音が混じったジャーという耳鳴りになります。
 また、低音障害型感音性難聴という主に500ヘルツ以下の低い音の難聴になる病気では、低い音の耳鳴りが聞こえます。

! 原因は十分に解明されていない

 このように、耳鳴りは聞こえにくい音と同じ高さの音が聞こえる性質があるので、間違いなく難聴と関連しているといえます。それにしても、聞こえない音なのに、耳鳴りだけは聞こえるなんて、まるで悪い冗談のようですね。
 では、なぜ難聴になると耳鳴りが聞こえるのでしょうか。これが、実はよく分からないのです。内耳には音の振動を感じて神経に伝える有毛(ゆうもう)細胞というものがありますが、この細胞が異常な放電を起こし、耳鳴りとして聞こえるといわれます。
 また、内耳神経や脳の聴覚中枢の過剰な活動を示す実験結果の報告もあります。
 最近では、PET検査を使って、聴覚中枢以外の高次脳中枢の活動を示す報告もあります。
 しかし、いずれの説もまだ確実とはいえず、耳鳴りの原因はまだ十分に解明されていないのです。

! 苦痛を和らげることを目指す

 耳鳴りの多くは内耳難聴になっていて、内耳の有毛細胞や神経細胞が変形し、数も減っています。根本的な治療、すなわち、これら傷ついた細胞の再生はまだできません。ですから、耳鳴りそのものを止めようとしてもうまくいかず、耳鳴りによる苦痛を和らげることを目指す方がよいのです。
 内耳の再生は大変に難しい課題ですが、近年、内耳も含め、体のさまざまな器官の再生医療について、多数の研究者たちが、熱心に取り組んでいます。どこかで突破口が開かれ、今は夢としか思えない難聴や耳鳴りの治療ができる日が来るかもしれませんね。

関連記事