【問い】 昨年秋の健康診断で「右側上部胸膜肥厚(きょうまくひこう)」が見つかりました。2年前から息苦しくなることがあります。また、3年ぐらい前からだんだんやせていき、体重が15キロほど落ちています。治療法や、生活で今後気をつけることがあれば教えてください。(若狭町、62歳女性)

 【お答えします】高瀬恵一郎 福井県立病院中央医療センター長

! 進行中か過去の跡か見極めを

 胸膜は、肺を覆っている膜のことをいいます。肺を直接包んでいる胸膜(臓側(ぞうそく)胸膜)と、胸壁にくっ付いている胸膜(壁側(へきそく)胸膜)の2種類があります。その膜と膜の間が胸膜腔(くう)です。肺が膨らんだり縮んだりする動きを滑らかにするスペースです。この部位に炎症(例えば結核性胸膜炎、膿胸(のうきょう))が生じると水がたまり、臓側胸膜の表面に線維性の物質が析出し分厚くなります。これが胸膜肥厚です。

 炎症が治まった後にも胸膜肥厚は残るので、現在進行している病変なのか、過去の病気の跡なのかを見極める必要があります。臓側胸膜側に石灰化がみられれば、炎症性の胸膜炎の跡といえます。大部分は結核性胸膜炎の石灰化です。しかし石灰化がないと、1枚の写真では新旧の区別が付きません。診断には過去の画像との比較がとても大切になります。

! 悪性中皮腫などの可能性も

 一方、徐々に胸膜肥厚が増していくように見える病変としては、がん性胸膜炎や悪性中皮腫があります。前者はたいてい胸水(きょうすい)貯留を伴っています。後者は悪性の腫瘍です。石綿暴露があると長年の経過を経て、胸膜肥厚がみられるようになります。この場合にも石灰化がみられることが多いのですが、壁側胸膜にみられる点が結核性胸膜炎との大きな違いです。

 病変の広がりによって、範囲が限られている限局性と、広範囲に及ぶびまん性に分けられます。限局性の場合、石綿胸膜肥厚では横隔膜の直上や心膜側に起きやすいので、分布を見るだけでもある程度、診断は可能です。

 CT撮影をすると、この胸膜肥厚の検出は容易になります。石綿吸入に伴う胸膜肥厚は悪性中皮腫が発生しやすいため、社会的にも問題となっています。

 ご質問の方の胸膜肥厚がいつごろから存在するのか、またどの程度の厚みなのか、石灰化があるのか、微熱を伴うのかなどが分からないので、的確にお答えできないのですが、3年間で15キロの体重減少は意識的にやせようとしたのでないのなら、尋常ではありません。それが胸膜肥厚と関係ある病気となると、悪性中皮腫などが疑われ、精査が急がれます。

 特に石綿を扱う作業をしていた方や、その近くで仕事をしていた経験のある方はご注意ください。また、過去には断熱材や防音材として建材にかなり広く使われていましたので、知らない間に吸入しているケースも見受けます。職歴がないので関係ないと決めつけないでください。

! 別の病気も疑い、全身の検査を

 しかし、一般的によく見かける大多数の胸膜肥厚は古い炎症の跡ですので、多くは自覚症状を伴いません。やせることもありません。

 質問の方は息苦しさを自覚することがあると訴えられていますが、例えば貧血があれば息切れを自覚することがあります。

 診断された胸膜肥厚とは別に、やせと貧血を起こす重大な病変が潜んでいるのかもしれません。全身の検査を受けられることをお勧めします。かかりつけ医とご相談ください。

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