辻隆博 福井赤十字病院・産婦人科副部長

 【問い】26歳の娘が今年の春ごろから、排卵時期になると2カ月に一度の割合で生理以外に不正出血し、1週間ほど続きます。婦人科のがん検診で相談したところ、ポリープも腫瘍もないが通常1センチの厚さの内膜が2センチあり、生理時に完全に出血できず、残ったものが数日後に不正出血として出ると言われたようです。その影響か貧血もあります。こういう例ではがんになりやすいとも言われ、ホルモン調整のために軽いピルを服用しますかと言われたそうですが、将来結婚・出産するのに影響がないか心配です。(敦賀市、女性)

 【お答えします】

! 排卵障害で出血か

 排卵時期に少量の出血はよくあることで、排卵期出血といいます。排卵期に卵巣から出るホルモンが一時的に増減するためで、異常ではありません。
 しかし、ご質問のお嬢さんの場合は、子宮内膜が通常より厚いということなどから、排卵期出血ではなくて排卵障害による不正出血のようです。

! 子宮体がんのリスク増加も

 少し専門的な話になりますが、卵巣は排卵の準備のために周期的に卵胞を形成し、卵胞ホルモンを出し、子宮内膜を増殖期という状態にします。排卵が起これば排卵した卵胞は黄体となり、卵胞ホルモンに加えて黄体ホルモンを出し、子宮内膜を増殖期から分泌期という妊娠しやすい状態にします。妊娠が成立しないと、黄体は委縮して黄体ホルモンも消失するため、子宮内膜がはがれ落ち月経(子宮内膜の新陳代謝)となります。しかし、いつまでも排卵がなければ黄体ホルモンが出されず、卵胞ホルモンだけの刺激で子宮内膜の増殖が続き、非常に厚くなり、しまいには出血を起こします。このように排卵がうまくいかない時に、お嬢さんの不正出血は起こっているのです。
 排卵障害のある方は、子宮内膜の厚い状態が持続しますので、子宮内膜の新陳代謝が悪くなり、子宮体がん(子宮内膜がん)のリスクが増加します。

! ピルに効用、妊娠希望なら中断

 軽いピル(低容量ピル)を使用するとホルモンを調整できるため、子宮内膜の新陳代謝が規則的になり、子宮体がんのリスクを減らすことができます。低用量ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類のホルモンが含まれています。従来のピルと違い、肥満や吐き気などの副作用を軽減するために、ホルモン量を減量したので低容量ピルと呼ばれています。もちろん避妊が主目的の薬剤ですが、それ以外の効用に子宮体がんのリスクや卵巣がんのリスクを減らすことも知られています。さらに月経も楽になり、にきびや多毛症を改善させます。特に生理が不規則な方や月経困難症の方にはお勧めしています。
 妊娠を希望される場合は、内服を中断すれば排卵も戻り、妊娠にも影響しませんので心配はありません。ただし低用量ピルでは性感染症の予防はできないことは理解してください。

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